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彼方 今はみなさん発表まで残ってますけど、当時は全員聞いてるってわけでもなかったんですよ。準決勝を大阪と東京の2会場でやってたこともあって、発表の時間が夜遅かったし。私達はウケた余韻もあるし、こんなアマチュアがNGKにいるのは場違いっていう気持ちもあったから、いつも行ってたNGKの目の前の串カツ屋で楽しく飲んでたんですよ。そしたら、発表前にスタッフの方から電話があったんです。発表会場に人がいなくてスカスカやから、近くにいたら聞きに来ませんか、と。哲夫さんがみんな連れて飲みに行っちゃったらしくて(笑)。

小田 すぐそこやし、ほな行こかと思って行ったら、本当にスカスカやった(笑)。でもみなさん近くにはいたみたいで、時間になったら帰ってきてました。

M-1スタッフに「出る気ありますか」と聞かれて…

――名前を呼ばれたときは相当びっくりされたんじゃないですか。

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小田 発表されたときは、なんか嬉しいよりも「ええっ!?」っていう感じ。カラオケ行ってたら「開会式で国歌歌ってください」って言われたような。

©文藝春秋 撮影=鈴木七絵

彼方 呼ばれるなんて本当に全く思ってへんかったから嬉しいっていう感覚はなくて、ただただ困惑。そしたら発表後にスタッフさんから呼ばれて、「出る気ありますか」って聞かれたんですよ(笑)。たぶんそこで「やっぱり無理です、いいです」みたいなこと言ったら次の人が繰り上がってたと思うんですけど。「いやいや、出ます」と。

小田 断る気持ちはゼロやったな(笑)。でもスタッフさんは色んな想定をしてはったやろし、アマチュアがいるっていうだけでいつもよりだいぶ手間がかかってたと思います。プロの方なら事務所に言ったら済むことをいちいち本人に確認せなあかんし。「発表前に絶対に会社にも報告してください」とも言われました。

彼方 でも、東京と大阪でお笑いに対する温度感って違うじゃないですか。特に当時だと、東京はM-1決勝の翌日でもゴールデンシネマの話をしてる感じの文化。だから会社にもなかなか言わなかったんです。そしたら記者会見の直前に、「Yahoo!ニュースに出ちゃうから電話しておいで」って諭されました(笑)。

「Yahoo!見たら、小田さんおった!」

――会社の方はどんな反応でしたか。

彼方 「君は何をしてるの? それは何? 漫才の大会?」って。今ほどM-1の知名度も高くなかったから、ちんぷんかんぷんな感じでした。その日は有給取ってたんで、結局「明日聞くからもう今日は休みなさい」って言われました。

――翌日の反応はどうでしたか。

彼方 会社に行ったら、みんなもう知ってはいて、ちらちらこっちの様子窺ってる感じでしたね。「どこの部署の子?」って人に聞いてるのが聞こえたり。

小田 私は大阪なんで、結構ガツガツ来る人もいました。「Yahoo!見たら小田さんおったからみんなにも知らせといたわ!」とか。

©文藝春秋 撮影=鈴木七絵

――初めてのアマチュアの決勝進出ということで、面白く思わないプロの方もいたのでしょうか。

小田 いはったんちゃうかなと私もそう思うんですけど、全然それは感じられなかったです。決勝に行った方は皆さんすごい優しくて。

彼方 常に劇場に行ってるわけでもないし、フリーの方みたいに活動してるわけではないからわからないんですよね。もしかしたらプロの方も、たまたま来た子やから別にええわって感じで、気にもされてなかったのかもしれないし。