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食べ物の好き嫌いも風太だけ激しい

 さらに、長生きの最大のポイントは何と言っても食事だろう。

 これについても、風太は他の個体とやや違う。好き嫌いが激しいのだ。

 12年間担当し、風太の隅々まで知っている濱田さんは「リンゴが大好きで、他の個体は食べられないような酸っぱいのでも食べてしまいます。一方、他の個体が喜ぶブドウは品種によって好き嫌いがあり、デラウエアや巨峰は食べますが、マスカットは苦手です。ミカンもあまり好きじゃありません。柿は風太だけ食べませんでした」と話す。

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「よし、散歩に行くぞ」。寝室から出る風太

 レッサーパンダは竹を主食としているほかは、何でも食べる雑食動物だ。濱田さんらは、そうした野生の食性をできるだけ維持させようと、いろんな食べ物を与えてきた。東日本大震災の発生時にリンゴを入手しにくかった時期があり、災害時にも生き延びられるよう、日頃から馴らしておきたいという考えもあった。しかし、風太の好き嫌いの多さには神経を使ったようだ。「最後は完食してくれましたけどね」と濱田さんは苦笑いする。

誇り高く、自分なりの生き方を貫く

 ただ、こうして我が道を行くのも、風太流の長生きの秘訣なのかもしれない。

 高齢化してからの風太は、なんと主食の竹をあまり食べなくなった。このため、水上さんは笹をミキサーにかけ、細かく裁断してエサに振りかけている。

 レッサーパンダには歯周病がつきものだ。「竹を食べるので、笹の粉が歯の間に詰まるなどするのです」と水上さんは説明する。

「僕を撮ってるの?」。長野市茶臼山動物園から来たタイヨウ。風太の孫娘、ゆうとお見合い中だ。屋内放飼場で

 ならば、口内のチェックも長生きには必要なのだろうが、「プライドの高い風太は、他のレッサーパンダと違ってなかなか飼育員に触らせてくれません。見えない右目の方から手を伸ばしても、左目で見えた途端にフーッと怒ります。口の中の状態は確認できないのが現状です」と水上さんは話す。

 風太は獣医の処置で、既に5本の歯を抜いており、他にも自然に抜けてしまった歯があるという。残る歯をどう維持していくかが課題なのだろうが、なかなか触らせてくれなければ、人が手を出しにくい。

「むしろ、私達に体を触らせるようになった時の方が危ないかもしれません」と水上さんは見ている。いよいよ弱った時だからだ。

 かくしゃくとして、誇り高く、自分なりの生き方を貫く風太。それは強い生命力の裏返しなのかもしれない。どうか長生きをして、日本のレッサーパンダ界の最長老になり、またメディアの注目を浴びてほしい。

千葉市動物公園の図書室には、風太の立ち姿がブームになった頃の写真が置かれている

撮影=葉上太郎