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違法キャバクラに機動隊が突入、「闇スロ」店はコロナバブルで歓喜… 東京五輪の裏で起きた2021年の歌舞伎町“摘発ラッシュ”を振り返る

違法キャバクラに機動隊が突入、「闇スロ」店はコロナバブルで歓喜… 東京五輪の裏で起きた2021年の歌舞伎町“摘発ラッシュ”を振り返る

genre : ニュース, 社会

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「おい、開けろ!」

 いまから約10カ月前の2021年2月1日深夜1時50分、緊急事態宣言と寒気で人足が減った新宿・歌舞伎町に怒声が響いた。

 区役所通り沿いの雑居ビル地下2階にある深夜キャバクラ店「花音」に、警視庁の機動隊が摘発に入ったのだ。警察官はこれまでにも毎週のように同店を巡回していたが、店は「居留守」で通していた。だが、今回の巡回はいつもと人数が違う。

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深夜キャバクラ「花音」摘発や「トー横キッズ事件」があった新宿・区役所通り ©文藝春秋

 1階エレベーター前にいたボーイは、店のグループLINEに「ヤバい」と書き残したまま逃亡し、そのメッセージを見た別のボーイは貴重品も店内に残したまま、慌てて非常階段から逃げた。

 店内にいた15人のキャバクラ嬢たちは、フロアとは別の鍵付き小部屋に隠れた。店はBGMを消し、客にも会話をしないように注意する。固唾を飲んで動向を見守るなか、木製のドアを斧で突き破り、機動隊員がなだれ込んできた――。

◆ ◆ ◆

歌舞伎町でもとにかく目立つ店舗だった「花音」

 2021年――コロナ禍の中であらゆる活動の自粛が進み、東京オリンピックも控えたなか、歌舞伎町にはびこる違法店は、都にとってまさに「目の上のたんこぶ」だったに違いない。

 警視庁は摘発の同日「花音」にいた店長や従業員6人を風営法違反(立ち入り拒否)容疑で逮捕。3カ月後の5月には、店のオーナーで自身も人気キャバ嬢だった桜井野の花(32)も無許可営業で逮捕した。

「花音」が入っていたビル。トー横キッズの事件現場とは隣同士だ ©文藝春秋

 桜井は「小悪魔ageha」で表紙を飾ったこともある人気モデルでもありながら、テレビやYouTubeで総額3000万円にも上るという自身の美容整形手術の写真を公開する“暴露系YouTuber”としても人気だった。

 桜井が経営する「花音」は、風営法で定められた午前1時までの営業時間を守らず、朝5時までの違法営業を行う“深夜店”だった。「オーナーが有名で、深夜店にもかかわらず堂々と営業していた」(歌舞伎町・キャバクラ関係者)こともあり、とにかく歌舞伎町でも目立つ店舗だったという。

「当時は深夜店といえば“野の花”というぐらい、幅をきかせていました。コロナ禍で歌舞伎町の人通りは壊滅的に減りましたが、そもそも開いている店自体が少なかったせいか、花音は終始賑わっていましたね。

 以前から警察の巡回はありましたが、今年のオリンピック前には明らかに回数が増えていたようです。居留守を繰り返していたこともあり、警察側もさすがにメンツを潰されたと思ったのでしょう。業界的には花音は『見せしめによる摘発』だったというのが一致した意見です」(同前)

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