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《費用目安は100万円》「親を捨てたい」という声の高まりで5年の間に相談者数が5倍に増加…終活をサポートする“家族代行サービス”の実態

『絶縁家族 終焉のとき―試される「家族」の絆』より #1 

2022/01/10
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 「家に帰りたい」と言われれば、

 「落ち着いたら、帰りましょうね」と答えるようにしている。

 母親はカラオケも楽しんで、一人暮らしの頃に比べてだいぶ明るくなった。遠藤が訪ねると、いつも喜んで部屋に招き入れ、お菓子などをくれるのだ。

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©️iStock.com

徐々に落ち着きを取り戻して、母親の面会にも行くように

 LMNが相談を受け、実家は売却し片づけた。母親と離れることで、徐々にA子さんも落ち着きを取り戻して、母親の面会にもだんだん行くようになってきた。

 しかし、入所から約3年後に、母親にがんが見つかり入院となったのだ。たまたま、入院の前に別の用事で施設を訪れていた遠藤とすれ違い、母親から声をかけられて、いつものように部屋に呼ばれてお菓子を手渡されたのが、最後になった。

 入院して一年半ほどで、新型コロナウイルス感染拡大の影響で面会が禁止になってしまったのだ。その間、A子さんも母親に会うことが出来なかった。

 やっと会えたのは亡くなるひと月ほど前、もう治療法がないと、医師から死期が近いことを告げられた。すっかり痩せ細った母親と対面して、A子さんのショックは大きかったようだ。

母の柩にすがりついて号泣したA子さん

 家族4人の家族葬で、通夜と葬儀が僧侶の読経で執り行われた。享年83。遠藤もスタッフと共に葬儀を見守った。

 A子さんは母の柩にすがりついて号泣していたという。家の墓にA子さんが納骨もして、すべて彼女自身で母親を丁寧に見送った。

 5年の月日の間にゆっくりと母へのわだかまりを解かしていったのだろうか。A子さんの気持ちの変化に、救われる思いがした遠藤だった。

 特養老人ホームにいる認知症の父親(85)は妻の死去を今も知らない。A子さんにはまだ、父のことが残っている。

 A子さんの父親のように認知症の高齢夫婦の場合、互いに配偶者の死を知らずにいることは少なくないらしい。母親も特養にいる父親のことを気にかけることもなかったという。認知症はお互いの存在も忘れさせてしまうのだろうか?

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