ジブリ映画『千と千尋の神隠し』(2001年)が1月7日に「金曜ロードショー」で放送される。映画は1年以上のロングランヒットとなり、興行収入は300億円超、観客動員は2350万人を記録。主題歌の「いつも何度でも」は、日本レコード大賞金賞、日本アカデミー賞主題歌賞などを受賞した。記録にも記憶にも残る歌を世に届けた木村弓さんは、その後も『ハウルの動く城』(2004年)の主題歌「世界の約束」を手がけるなど、ジブリ作品との縁は続いた。ジブリ映画、宮崎駿監督作品における“音楽の力”について、木村さんに伺った。(全3回の2回目/#3に続く)
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宮崎駿監督は「どうか大切に育てて下さい」
――残念ながら『煙突描きのリン』の企画は没になったそうですが、宮崎監督からの手紙には「いつも何度でも」を「どうか大切に育てて下さい」と書かれていた。『千と千尋の神隠し』のお話が具体的になってくるまで、木村さんはこの歌をどのようにあたためていたのですか?
木村 『煙突描きのリン』のことを話したら宮崎さんにご迷惑をお掛けしますから、そこには一切触れずに「こういう曲を作りました」とコンサートで歌っていました。皆さん気に入ってくれて、「あなたの代表曲になるんじゃない?」と言ってくれる人もいました。
――その頃のコンサートに、宮崎監督を招待されたりは。
木村 何回かお声がけしましたけれど、やっぱりお忙しい方なのでなかなか難しくて。
「使うって、どの曲ですか?」と聞いちゃった
――コンサートで「いつも何度でも」を歌うようになって1年半が過ぎた頃に、ジブリのスタッフの方から電話があったそうですね。
木村 あれはたしか2001年の2月です。まずジブリのスタッフの方が「あの曲を『千と千尋の神隠し』に使いたいと宮崎が申しているのですが」と仰って、その後に宮崎さんが電話口に出られた。そこで私が「使うって、どの曲ですか?」と聞いちゃったんです(笑)。
というのも、その頃はすでにテレビで『千と千尋の神隠し』の予告編が流れていて、それには久石(譲)さんのちょっと不穏な感じの音楽がかかって、闇の中で千尋が逃げているシーンが使われていたんですね。「あっ、今度の映画はこういう感じなんだ」と思いました。その世界観に「いつも何度でも」が結びつくとは素直に思えなかったんですね。
宮崎さんが繰り返して「最後に『いつも何度でも』を流したいんですけど、いいですか?」と仰るので「もちろんです」と答えましたけど、「でも、合いますか?」って。するとスタッフの方が「今度の作品もお風呂屋さんが舞台ですし、リンという女の子も出てくるので」と(笑)。