『ハウルの動く城』の主題歌「世界の約束」も手掛けた
――『千と千尋の神隠し』に続く宮崎監督の作品『ハウルの動く城』(2004年)の主題歌は、倍賞千恵子さんの歌う「世界の約束」です。この曲は木村さんが作曲、谷川俊太郎さんが作詞されて、当時すでにリリースされていたアルバム『流星』(2003年)の収録曲でしたね。
木村 2002年に『空も海も風も』というアルバムを出して、宮崎さんにお送りしましたら「もうちょっとアレンジを工夫して、変化のあるアルバムにしたほうがいいんじゃない?」と、間接的な形でアドバイスをいただいたんです。それで『流星』を作る際には他の楽器も加えたりしてみましたら、宮崎さんがたいへん気に入ってくださって。その時は手紙ではなく、ファックスでご連絡をいただきました。しばらくしてから、アルバムに収録されている「世界の約束」を『ハウルの動く城』の主題歌に使いたいと、今度はレコード会社の方を介して伝えてくださいましたが……。
――お話を伺っていると、宮崎監督は非常に筆まめな方なんですね。
木村 筆まめといっても、それぞれのやり取りの間に長い時間が横たわっていますから(笑)。アルバム『流星』では、「さとうきび畑」のカバーも気に入ったと言ってくださって嬉しかったですね。
ジブリの音楽といえば久石譲さん
――ジブリの音楽といえば久石譲さんですよね。「いつも何度でも」のレコーディングにも立ち会われたそうですし、『ハウルの動く城』の「世界の約束」は編曲を久石さんが担当されています。
木村 久石さんはすごくデリケートで、優しい方なんじゃないかなって。私のレコーディングの時にも、宮崎さん側から様々な注文を受けて音楽を作っていらっしゃる状況を少し垣間見ましたが、久石さんがある時、なぜかとてもご立腹されていたりして。
その様子を見て「たいへんな世界だなぁ」と思いましたけど、私の夫(中川俊郎氏)も作曲家でCMの音楽などもやっているので、宮崎さんの立場も久石さんの立場も、両方ともとてもよくわかるような気がしました。後からここを直してほしいとか、変えてほしいという要望はどうしたって出てきますし、場合によっては間に入っている方の伝え方によって、考えや方向性のズレが生じたりするものですからね。