「いつも何度でも」を流しながら作業に没頭する宮崎監督
――2001年7月に日本テレビで放送されたメイキング特番『千と千尋の神隠し 公開直前スペシャル!』では、「いつも何度でも」のカセットを流しながら作業に没頭する宮崎監督の姿が映されていました。試写で宮崎監督との初対面を果たされた時、何か印象に残っていることはありますか?
木村 東宝の試写会で、上映前にご挨拶させていただいたのだと思います。とにかく、とても正直でシャイな方だなと(笑)。その後、「いつも何度でも」は日本アカデミー賞主題歌賞をいただいて、授賞式では宮崎さんと一緒のテーブルだったんです。そこで少しお話をして、ちょうど『花の星』(2002年)というアルバムを作っている最中でもあったのでライナーノーツをお願いしたら、「いいですよ」と言ってくださいました。その時は何も仰らなかったけれど、その文章の締めくくりに、こう書いていただいて、すごく嬉しかったです。
「木村さんの純度は、小さなホールか部屋でライブでしみじみときくのがいい。映画賞の会場で、彼女が何度も何度も唱わされた時、ぼくは彼女のかたわらに走りよって、会場の人々に大声で『静かにきけ!』と怒鳴りたい衝動にかられつづけていた」
スタジオジブリのそばに豚屋と呼ばれるアトリエがありますけど、そこでも1、2回お会いしたかな。「いつも何度でも」以外の曲も聴いていただいたりしたことがありますけれども。やはり正直で真っ直ぐな方という印象は変わらなかったですね。
歴史的ロングランヒットで変化した環境
――『千と千尋の神隠し』は2001年7月に公開されて以来、興行収入300億円超を記録、日本歴代興収ランキング1位に19年も君臨。サントラCDは35万枚、「いつも何度でも」のシングルCDは51万枚出荷を記録しました。木村さんの歌手としての環境は、がらりと変わってしまったのではないですか?
木村 大勢の人の前で歌わせていただける機会が増えたので、本当に有り難いことではありました。映画が公開されてから5年くらいはものすごく忙しかったんですけれども、私自身、そんなに丈夫ではないというか体に不調があったもので、事務所などには一度も所属せず、ずっとフリーでやってきたんです。そういった意味では、他のアーティストの方々と比べたら、無理することなく活動できたんじゃないかな。
――忙しい時があっても、ご自身のペースを守りながら、ゆったりとした感じで音楽活動ができていたと。
木村 その道を選びました。その代わり、大がかりなプロモーションを展開してもらうようなこともありませんでしたから、もう少しそちらにもエネルギーを使っておけばよかったのかなと時々思うこともありましたけれど。