スケートボード盛り上がりの予兆は2020年から
思えばその予兆は、一昨年からあった。きっかけは2020年3月の全国の学校の一斉休校だ。ソーシャルディスタンスを保つために、大人数で行うスポーツより個人で楽しむことができ、なおかつ他人との距離を気にせず遊べるスポーツへの関心が高まったことを背景に、若者を中心ににわかなブームが起こったのだ。
そうして注目が高まりつつあった中での、五輪におけるメダル獲得ラッシュが更なる火付け役となった。
しかしそれだけでは、ここまで話題にはならなかったのではないだろうか。筆者は、スケートボードの「カルチャー」としての魅力が広く伝わったことが、爆発的ブームを引き起こした要因ではないかと考える。それは昨年の「ユーキャン新語・流行語大賞」を見れば明らかだ。
スケートボード界からは、日本史上最年少金メダリストとなった西矢椛選手に対して、倉田アナウンサーが発した「13歳、真夏の大冒険」。そして解説を務めた瀬尻稜プロの「ゴン攻め/ビッタビタ」がノミネートされた。実はこの言葉こそが、スケートボードのルーツであるカルチャー性が生んだ言葉なのだ。
瀬尻プロは、五輪の解説で「練習を見てても、すげえゴン攻めしてて」と、独特の言葉でコメント。実況を担当したフジテレビ倉田大誠アナウンサーから、言葉の意味を問われると「すごい攻めてるてことです」と答えていた。
瀬尻プロは、表彰式を欠席したが、「ただただビックリしております」、「東京五輪の解説時に自分なりに自然体で話していただけで、まさかその中の言葉がこんなにも反響をもらえるなんて、思ってもいませんでした」とコメントを寄せた。
「カウンターカルチャー」として成長してきたスケートボード
そもそもスケートボードは、元来スポーツとしての要素は薄く、歴史を重ねていく中で徐々にスポーツとしての分野が確立していった。そのため愛好者の方々には「カッコいい遊び」「ただ単に楽しい。やりたいだけ」といった感覚の人が多いのも事実であり、そこには“スポーツをやっています”という考えは希薄だ。
スケートボードは社会の型にはめられたくない、または適応できない、迎合しようとしない者たちの居場所、つまり「カウンターカルチャー」として成長してきた。そうした閉ざされたコミュニティの中で独自の言語、音楽、ファッションなどが文化として成熟していったのだ。