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絶対使われないように、気に入らない写真には傷をつけて

――貝殻ビキニしかり、武田さんの写真を楽しみにしている人がたくさんいます。ただ、一見グラビアの世界は華やかそうに見えて、すごく厳しい世界なのかなとも想像しますが、いかがでしたか?

武田 やっぱり見られるものなので。目線とか、足の先、足の指、小指1本見てもらっても綺麗に映るように考えますね。かなりストイックにやっていたので、撮影中は楽しいとかじゃなかったですね。それに、写真はずっと残るものだから、100年後に見てもカッコいい写真集を作りたい。私が歳を重ねて亡くなっちゃった後でも、若い世代の人が見たときにいいなと思うものを作ろうとは意識していました。

「小指1本見てもらっても綺麗に映るように」ストイックにグラビアに取り組んでいた武田久美子さん

――たくさん写真集を出された中で、カメラマンさんとの相性というんでしょうか。このカメラマンさんは言葉が上手とか、こう撮ってくれるとかあったりしましたか。

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武田 撮影中は…レンズを穴としか見ていませんでした。どなただからとか、ちょっと失礼ですけれども、大御所の方だからとかそういうのはなくて。レンズがファンだと思っていたので、レンズの先に見てくれている人がいる。だから誰が撮ってくれても、そこで「きれいだね」「かわいいね」とか言われようが、耳にも入ってこなかったです。むしろ黙ってほしいなって。レンズ以外はどうでも良かったです。

――では、この写真はNGだとか、そういったものはあったんでしょうか。

武田 昔はポジフィルムですからね。フィルムを5時間くらいかけて、自分で全て覗きました。そして、嫌な写真には顔に全部傷をつけていました。絶対使われないように。

「自分の目線だけじゃだめだ」14歳で開いた悟り

――みなさん、そこまでされるんですか?

武田 しないでしょうね。ただ、自分が買う写真集じゃなくて、私のことが好きな、私のことを見たいと思ってくださるファンに売るものですから。

 でも、1つすごく勉強になったことがありました。アイドルのときにLPレコードを2枚出したんです。『クミコレクション』って言うんですけど。そのLPレコードの発売を記念して、ミニコンサートを開いたら、2,000人くらい来てくれて。そこで、レコードを買ってくださった方の中から抽選で20名の方に壇上に上がってもらって、私の写真1枚と握手付きというイベントをしたんです。4種類の写真が各5枚あって、早い者勝ちで選んでもらうと。その4種類の写真は、自分でもすごく気に入っている写真が1枚。なんでこんなの入れたの?嫌だこれ、引っ込めて欲しいっていうのが1枚。あとは可もなく不可もない写真でした。

 そこで、ファンの方に好きなものから選んでもらって、何からはけていったかっていうと、私が嫌な写真からはけていったんです。「え? こっちから?」って。結局、最後に残った1枚は私が一番好きな写真でした。

14歳とは思えないプロ意識を持っていた武田久美子さん

 そのときに、もう14歳にして悟りを開きました。一概に自分の目線だけじゃだめだなと。それ以降は、私が好きな写真が4割、あとはみんなで決めてねって。だから、顔に傷をつけた写真はよっぽどですね。余白をもたせないで、自分で何でもやろうとすると失敗すると学びました。

(撮影:杉山拓也/文藝春秋)

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