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《「美人」「主人」「奥さん」は使わないほうがいい?》断筆宣言の筒井康隆氏が考える現代の“言葉狩り”

《「美人」「主人」「奥さん」は使わないほうがいい?》断筆宣言の筒井康隆氏が考える現代の“言葉狩り”

2022/01/22
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「戦争が好きとあえて言ってみたらどうか。それが小説家だと思う」

 戦争について議論すると、みんな戦争反対ばかりですが、それでは議論は深まらない。人間の本質として戦争はなくなりません。戦争は面白いものなのですよ。小林信彦が『ぼくたちの好きな戦争』なんて小説を書いているし、僕も昔からそう思っていました。面白くなければ、こんなたくさんの戦争映画ができるわけない。

 自分が戦争に行くのは嫌だし、戦争を起こされたらたまったものではないけど、戦争は面白い、戦争映画は面白いと言ってもいいと思います。戦中や戦後、僕は人間の醜さを目にしたけど、千里山から見た大阪の大空襲を見て、美しいと思った。そのとき、そのときで感じたこと、考えたことを自由に言ったり、書いたりすればいい。まあ、無責任なものですよ。小説家だから。

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死ぬまで追いつめてはならない

 ただ表現の自由か人権かと問われれば、一も二もなく人権、さらにいえば命のほうが大切です。

 誰が何を言ってもいい時代だからといって、SNSに非常に差別的な言葉や、誹謗中傷を匿名で書きこんでいる輩がいます。まずは、この問題に取り組むべきではないでしょうか。

筒井康隆著『朝のガスパール』(新潮文庫、1995年)

 僕は30年前に朝日新聞で『朝のガスパール』を連載したとき、「パソコン通信」で読者の声を集めて、それを連載中の小説に反映させることを試みました。このとき投稿には署名が必要でしたが、にもかかわらず言葉が過激になっていくことがあった。電子空間で人は凶暴になるのです。

 一昨年、「テラスハウス」というテレビ番組に出演していた女性が、匿名でSNSに書きこまれた誹謗中傷に痛めつけられ、自殺にまで追い込まれたことがありました。

筒井康隆さん「『美女』は消えますか?」全文は、「文藝春秋」2022年2月号と「文藝春秋 電子版」に掲載しています。

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