歌舞伎町に誕生した「ぴえん系女子」、「トー横キッズ」、「自殺カルチャー」、「新世代ホスト」、「SNS洗脳」……。なぜ未成年たちは深い闇に落ちてしまうのか――。

 そのリアルを実体験と寄り添う取材で書き上げたのが現役女子大生ライター・佐々木チワワ氏による『ぴえんという病 SNS世代の消費と承認』(扶桑社)である。ここでは同書から一部抜粋して、Z世代のリアルを紹介する。(全2回の1回目/後編を読む

佐々木チワワ氏 ©末永裕樹/文藝春秋 撮影協力:冬月グループ FUYUTSUKI -DeZon-

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病みメイクの女子たちの会話「マジぴえん」

 2021年夏、新型コロナウイルスの「震源地」扱いされた新宿・歌舞伎町の路上。精神を病んだふうの病みメイクを施した女性2人が、顎にマスクをかけ、コロナを気にする様子もなく、こんな会話を交わしていた。

A子 「はぁ~......。今日はパパ活で5万引くつもりだったのに、3万円しか引けなかった、マジぴえん」

B子 「あぁ、それはぴえんだね~。そういえば、アンタが指名してるホスト、この前、黒髪のぴえんとラブホテル街を歩いてたよ」

A子 「マジ? アイツ......。私の前では『ぴえん系の女、苦手なんだよね』なんて言ってたのに......。ないわ~」

B子 「あ、あとこの前、歌舞伎のアパ前でぴえんがシャンパンボトル持って転がっててさ(笑)」

A子 「えええ~、それはぴえんすぎない?」

 汎用性の高い「若者言葉」はいつの時代にもある。すごい、やばい、エグい、エモい、少し前は「卍(まんじ)」。そして令和3年の現在は「ぴえん」ではなかろうか。右の会話では、意味が移ろい、わかりにくいことこのうえないが、......著者からすればすべて理解できる。

 私なりに訳せばこうだ。

『「ぴえん」という病 SNS世代の消費と承認』 (扶桑社新書)

A子 「はぁ~......。今日はパパ活で5万引くつもりだったのに、3万円しか引き出せなかった、最悪......」

B子 「あぁ、それはやってらんないね~。そういえば、アンタが指名してるホスト、この前、黒髪の幼い感じの女の子とホテル街を歩いてたよ」

A子 「マジ? アイツ......。私の前では「量産型女子、苦手なんだよね』なんて言ってたのに......。ないわ~」

B子 「あ、あとこの前、歌舞伎のアパ前で泥酔した女が転がってたよ(笑)」

A子 「えええ~、それは危険な状況すぎない?」

  これが、歌舞伎町に生きる、いや、現代の若者たちの標準的な会話になりつつある。そもそも、ぴえんとは、何なのか――。