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「ぴえん超えてぱおんだわ〜」「彼氏が優しかった。ぴえん」若者の会話は難しい? “JC・JK流行語”の意外すぎる使い方

『ぴえんという病』より#1

2022/01/24
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絵文字が後押しした「ぴえん顔」の定着

 まず「ぴえん」という言葉の発祥に遡る。アニメや漫画のオノマトペとして、幼い子供や若い女性が泣くときの表現として「ぴええええ」「ぴえーーーーん」などと長年にわたり使われてきた、その誕生には諸説あり、泣いている様子を表す擬態語「ひんひん」が進化したという説や、韓国語で鳴き声の擬声語である「힌(ひん)」からという説もある。昭和から平成にかけて全世代が知っている言葉だった、といえるだろう。

  そこから「ぴえん」という独立した言葉になったのは、2018年、スマートフォンの絵文字の規格であるUnicodeに「Pleading Face」なる絵文字が追加されたからにほかならない。

 下がった眉、潤んだ瞳、今にも泣きだしそうな表情をしている「Pleading Face」の直訳は「嘆願する顔」や「弁解する顔」だ。iPhone、Androidなど大半のスマートフォンにこの絵文字が適用され、若者たちに親しまれていく。

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「Pleading Face」©️iStock.com

 

 このPleading Faceが誕生する前も、SNSでは「ぴえん」という言葉が実際に使われていた。面白いデータがある。社会と個人の関係性に着目・研究するニッセイ基礎研究所生活研究部研究員の廣瀬涼氏が、2021年2月発行の「ニッセイ基礎研REPORT(冊子版)」2月号[Vol・287]で、「「ぴえん」とは何だったのか」というタイトルのレポートを発表している。一部を抜粋する。

 Pleading Faceが存在する以前は、涙を流している絵文字や顔文字とともに「ぴえん」という言葉もSNSで投稿されていたが、泣いている度合いが「ぴえん」という言葉を使う人同士でも様々であった。この理由として当時の「ぴえん」は、あくまでも「びえーん」の派生語である「ぴえーん」を簡略化したものとして使用していた者と、“ぴ”と“ん”の間の“え”の文字数で泣きわめく声の大きさや長さを視覚化するという方法に由来して使用していた者がいたからである。

 

「ぴええええええーーーん」

 

「ぴええん」

 

 ※上の方が下よりも泣き喚いている様子を表すことができる。

 

 その後Pleading Faceが登場することで、“え”の個数で悲しさを表現していた人々が、大泣きするまでもない感情を、この絵文字と「ぴえーん」を最少の “え”の数で「ぴえん」と表現するようになったことからPleading Faceは、「ぴえん顔」として定着していった

 言葉にするほどでもない「ぴえん」という心情を、Pleading Faceという絵文字の遊びに置き換えていくのが若者に定着したのだ。

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