10代のころから歌舞伎町に出入りし、フィールドワークと自身のアクションリサーチを基に「歌舞伎町の社会学」を研究する佐々木チワワさん。

 2021年12月には、歌舞伎町やZ世代のリアルを著者自身の実体験と寄り添う取材で書き上げた現代若者論『「ぴえん」という病 SNS世代の消費と承認』(扶桑社)を出版した。そんな彼女に、混迷の時代を生きる“ぴえん”な若者たちのリアルを聞いた。(全2回の1回目/後編を読む

佐々木チワワ氏 ©末永裕樹/文藝春秋 撮影協力:冬月グループ FUYUTSUKI -DeZon-

◆ ◆ ◆

ADVERTISEMENT

「ぴえん」は文脈によって意味が変化する

――佐々木さんの著書のタイトルにもなっている「ぴえん」。そもそも「ぴえん」とはどういう意味でしょうか?

佐々木 一昔前に流行った「卍(まんじ)」とよく似ていると思っています。古語の「おかし」にも近いですね。使われる文脈によって意味が異なるんです。

 例えば、「今日卍と会った。こわかった~」という場合の「卍」は、ヤンキーのことを意味しますよね。ほかにも写真を撮るときの「ハイチーズ」の代わりに「まじ卍」と使われたり、「明日のテストまじ卍」(意味:勉強してなくて詰んだ)という使われ方もします。

「ぴえん」も同じで、「今日ぴえんに会った」(意味:今日メンヘラに会った)とか「好きピに会えなくて、まじぴえんだった」(意味:好きな人に会えなくて悲しかった)という使われ方をします。

「ぴえん系女子」は、ぴえんな言動をしてそうな女子を指します。

©末永裕樹/文藝春秋 撮影協力:冬月グループ FUYUTSUKI -DeZon-

――ぴえんな言動。

佐々木 俗に言うメンヘラに近いです。地雷系のメイクをして、歌舞伎町でスト缶(ストロング缶)をストローでチューチューしながら、「推ししか勝たん」と言っていたらぴえん系女子です。最近では歌舞伎町以外にもこういう格好をした女の子が増えているので、ぴえん系女子の定義は広くなっていると思います。他にも「量産型女子」や「地雷系女子」というカテゴリもあります。

「量産型女子」は本来、文字通りファッション誌で紹介された服をそのまま着たり、似たような服装をしている人々を指す言葉でした。でも最近では、量産型も時代とともに変化をみせ、「かわいく思われたい、かわいくありたいがための没個性」へと変容しています。あえて、似たようなファッション、似たようなメイク、似たようなヘアスタイルで、見た目に特徴のないお人形的スタイルという意味合いが強まっています。

 対して「地雷系女子」は、病み系の要素をより濃くしたもので、今にも精神が崩壊しそうな泣き顔系メイク、服装はハイブランドのアイテムにあえてマイメロディやシナモンロールなどサンリオ系キャラクターのポーチ、ぬいぐるみなどを身に着けているのが特徴です。