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 SNSという巨大コミュニケーションツールで、躍動するPleading Face。すぐに「ぴえん顔」と呼ばれるようになり、現在はスマートフォンの変換機能に「ぴえん」と打ち込めば絵文字が出てくるようになる。

 また、若者の流行の発信地、原宿にあるバラエティショップ「サンキューマート」では、ぴえん顔を模したクッションやぬいぐるみが販売されて大ヒット。漫画やアニメでもぴえん顔のキャラクターが多数登場するなど、一大ブームになった。2020年3月に発売されたNintendo Switchソフト『あつまれ どうぶつの森』では、ヒツジを模したキャラクターのちゃちゃまるが、下がり眉、瞳を潤ませた表情はまさにぴえん顔そのもの。任天堂ですら、ぴえんを強く意識しているのは明らかだった。

©末永裕樹/文藝春秋 撮影協力:冬月グループ FUYUTSUKI -DeZon-

JC・JK流行語大賞を獲る「ぴえん」

 Pleading Faceの普及とともに、「ぴえん」という言葉自体も若者たちに浸透していく。前出の廣瀬氏が行ったアンケート『どのような意図で「ぴえん」及び「ぴえん顔の絵文字」を使うのか(複数回答)』でも、「残念な感情を表すため」が93 %だが、ホッとした気持ちを表すためも71%など、「バイトしんどい。ぴえん」と悲しいとき、「彼氏が優しかった。ぴえん」と嬉しいときなど、心情を表す汎用性の高い表現として広まっていった。

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 この現象に似ているのは、2016~2017年に流行した「卍」であろう。卍は当時、「それは卍だね」「3組の斎藤くん、上級生に喧嘩で勝ったらしいよ。卍じゃね?」というふうに使われており、大きくは「ヤバい」の意で、ヤンチャな人に対す言葉であったり、テンションが上がったときに使われていた。「卍だね」だけでなく、「とてもヤバい」の意として、キャッチーで語呂のいい「マジ卍」も使われていた。

 結果、卍と同じく、ぴえんも「JC・JK流行語大賞2019(コトバ部門)」で1位を獲得。若者言葉として、一般に認知されていく。また「JC・JK流行語大賞2020上半期コトバ部門」では、よりぴえんな状態を指す「ぴえん超えてぱおん」という言葉も5位にランクインしている。