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「売り掛けがないと働けない」1ヶ月で借金200万を背負う若者も…歌舞伎町・ホストクラブで行われる恐ろしすぎる“ゲーム”とは

『ぴえんという病』より#2

2022/01/24
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 別の売れっ子ホストも自分の売り上げに対して1人が使う金額が3割を超えないように気をつけているという。「ある程度の売り上げを自分1人で支えているとなると女の子が優位になってしまう。そこをコントロールすることも含めて自分の仕事」という内容の発言をしていた。

 こうしたホストがいる一方で、ほぼ一人の客で売り上げを立てている一本釣りホストや、売り掛けに失敗して“飛ぶ(逃げる)”ホストもいる。この売り掛けという制度が、ホストたちの稼ぎを暴騰させる一面もあるのだ、が。

©️iStock.com

女性もホストも陥る売り掛け地獄

 売り掛けとは、いわゆる「ツケ払い」のことである。ホストクラブでは売り掛けでの飲食が一般化しており、給料日後である翌月の2~5日に、使った金額を支払うという仕組みだ。10万円しか財布に入ってない場合でも、指名ホストの誘いでシャンパンを入れて30万円の会計をすることができる。その場合、現金で10万円を支払い、残った料金は翌月の決められた日までに入金すればいい。基本的に売り掛けは指定日までに直接店舗にもっていく必要性があり、「売り掛けを入金したら担当切るもん! ぴえん!」と宣言したホス狂がそのまま店にずるずると引き込まれ、結局、売り掛けを払いに行ったのにまた売り掛けをこさえて帰るといった事態が度々起こる。

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 風俗で働くホス狂のなかには、月初めに200万円などの売り掛けをし、1か月かけて働いてその金額を稼ぐタイプも存在する。「売り掛けがないと働けない」と話すぴえん系女子も存在する。「稼いで飲む」のではなく、「飲んでから稼ぐ」というスタイルが確立しているのだ。売り掛けをするとその金を払うまで担当ホストとの関係性が切れないこともあり、あえて売り掛けをしたりするケースもある。売り掛けをした場合、覚書として売り掛けの金額を青い伝票、通称「青伝」をもらうことになる。これをホス狂の業界では「伝票はラブレター」「運命の青い糸」などと呼ぶ。

 もしもお客が売り掛けを支払えず逃げてしまった場合、ホストが自腹で店舗に支払うことになる。見えや狸の皮算用でむちゃな売り掛けをした結果、給料がゼロになるどころか店側に借金をするホストも存在するのだ。しかし、この売り掛けという不安定なシステムがあるからこそ、ホストたちは破格の売り上げを立てられるのも事実である。

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