2020年は1バレル(159リットル)おおよそ20~40ドル台で推移していたが、2021年10月下旬には85ドル超と、7年ぶりの高値をつけた。前年比で2~3倍になった計算である。
「脱炭素化」が価格上昇の原因だった
この価格高騰の原因は各国でワクチン接種が進み、世界経済が回復へ向かったからだ。
2020年の夏から、まず中国経済の拡大が進み、欧米経済も2021年春には底入れした。経済活動が活発になってヒト・モノの動きが増えると、おのずとエネルギー需要が増えて、原油価格は上昇していく。じつは日本のガソリン・灯油の価格も一昨年の前半から徐々に上がっていた。
国内市況を調査している「石油情報センター」によると、昨年12月半ばにはガソリンが1リットル165円台と、前年比で2割以上も上がり、灯油(店頭価格)も1リットル106.9円と前年比3割以上と大きく上がっていた。
昨年12月はオミクロン株の感染拡大が懸念されて経済活動のスピードがにぶり、世界的に原油価格は落ち着いた状況だったが、それでも前年より大幅にアップしている。
問題なのは、原油の価格上昇は一時的なものではないということだ。なぜなら高値基調の背景には、増産に慎重なOPECやロシアなどの産油国の思惑があるからだ。
世界的に脱炭素化が唱えられているいま、産油国は将来的に原油の需要が減少すると警戒している。だから増産には慎重になっているし、おそらく内心では原油高を歓迎しているだろう。
そうした産油国の態度に業を煮やしたアメリカのバイデン大統領は、昨年11月に5000万バレルの石油備蓄の放出を発表。アメリカの要請を受けた日本なども同調した。
その効果は推移を見ていくしかないが、脱炭素化という世界的な潮流が変わらないかぎり、産油国が供給量を積極的に増やすことは考えにくい。今後も高値基調は続くだろう。