去年、コロナ禍で外食産業が壊滅するぞと騒がれていた時期に、パンケーキ屋を営んでいた松田公太さんが「外食産業の声」と称して、不動産の家賃減免を求める活動を始めていたのですよ。まあ、気持ちは分かるんですけどね。

【新型コロナ】「外食産業の声」発足、家賃減免を求める「支払いモラトリアム法」提言
https://www.inshokuten.com/foodist/article/5745/

ぼろ儲かりしてても家賃は上がらないだろうに

 別に松田公太さんだけが悪いわけではないのですが、零細不動産オーナーの立場からしますと、昨今の不動産市況の低迷をもってなお、テナント側が苦しいからと言っていちいち家賃を引いていては身が持たないのもまた事実であります。

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 仮に、彼のパンケーキ屋がぼろ儲かりしていても、不動産オーナーからすれば「お前ら儲かっているな? 家賃を上げさせろ」とはなりません。ちくしょう、俺の物件でそんな大儲けしやがって。しかし、実際には契約上決まった金額が入ってくれば文句の言いようがなく、基本的にはどんなに千客万来の大にぎわいでも指をくわえてグッと我慢するほかないのです。

写真はイメージ©️iStock.com

 儲かってるときは「儲かってるので家賃あげてください」なんてことは絶対言わず、コロナで客が減れば「外食産業は日本の食文化を守っているのだから、潰れないように賃料を下げろ」などと言い出すのは不公平だと思うんですよね。悔しくて、毎晩泣いてしまうぐらい、不動産オーナーの人権を蹂躙しています。

書き入れ時であるはずの飲食店がなぜ倒産・店じまい

 さて、悲惨なコロナ禍が始まってから1年半が経過し、あの大変だった第5波が終息して、ようやく日常に近い生活が戻ってきました。医療機関の皆さんも、政府の人たちも、自治体もよく頑張ったし、また私たち日本人もよく我慢したなあ。そう思うわけであります。これだけ我慢をしたのだから、感染症も劇的に減らせたし、ワクチンも頑張って打った。きっとこれから良いことがあるだろう。よっしゃ、リベンジ消費や!

 そう思っていたら、あれだけ「食文化は大事だ」と言っていた飲食店が、現在バタバタと倒れ始めているじゃないですか。なんでコロナ禍が終わってから廃業してんだよ。話が違うだろ。居酒屋や軽食だけでなく、大手飲食チェーン店も経営が一気に苦しくなり、年末の忘年会シーズンに向けて書き入れ時であるはずが、なぜ倒産したり店じまいに追い込まれてしまっているのか。

 蓋を開けてみたら、この飲食店に対する「休業協力金」の支給が、感染者数の減少と共になくなってしまったのが原因だったようです。言われてみれば、お店を経営していれば時短するだけで休業協力金がもらえる制度があるなら、バイトも雇わなくていいし、貰える協力金から家賃を引けばそのまま利益じゃんという。地元のさびれた商店街にある2坪ぐらいのスナックとかでも満額休業協力金もらってたけど、お前らそもそも休業してたようなもんじゃねえか。ふざけるな、誰だこんな制度を考えたのは。