文春オンライン

インフレ率は上向いても…「安く買いたたかれる日本」の没落で迎える寒い冬

2021/11/18
note

資源高・材料高に「円安」という問題

 当然、そういうザルな支援制度に寄っかかっていたら、コロナ感染者が急激に減って通常営業しろという話になった瞬間、もたれていた壁がパッとなくなってみんな転ぶわけですよ。

 飲食店の規模を問わず、ここ2か月ほどで経営破綻が急増したのは、これらの支えがいきなり消失した割に年末の忘年会がいまだ軒並み自粛となって、売上が戻らない状態になっておるからと見受けられます。私の大変親しくさせていただいている飲食チェーンも、よし、コロナ終わったぞ、これから頑張るぞと先月張り切っていたのに、今月に入ってあまりの客の入らなさにお通夜状態となっていました。そのまま死んでしまうのではないかと心配になります。

 家賃を値下げしろとか、休業補償金を、と言っていた外食の皆さんにも事情があるのでそこは理解するとしても、実際にいま私たちの経済で起きているのは資源高、材料高と、円安という問題です。この原稿を執筆している11月12日現在、ドル円相場は114円台ですが、ちょうど1年前には約105円前後だったことを考えると、対ドルで日本円は8%ほど安くなっています。

ADVERTISEMENT

輸入食材の品薄・高騰は止まらず

 一方、松田公太さんが経営するパンケーキ屋が原材料で使う小麦粉は世界的な相場上昇で、9割を輸入に頼る小麦粉の売り渡し価格が10年来の高値となりました。家賃は値下げしろと騒いでいたのに、小麦を下げろと言わないのは、それだけパンケーキにおける原価に占める原材料費の割合はそんな高くないのかな、ボロ儲かりなのかなと思わずにはいられません。ちくしょう。ちくしょうめ。

 ともかく、小麦粉など輸入穀物の値段は、高いものでこの半年で26%ほど上昇しました。お家賃も半年で3割増額できたらどんなにいいことでしょう。

輸入小麦の価格が上昇 小麦粉や食パンなど 値上がりの可能性 | NHKニュース
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210908/k10013250061000.html

 そればかりか、輸入に依存している食材の品薄・高騰は止まらず、例えば牛タンのような食材については一時的に値段がほぼ2倍になりました。トウモロコシや食用油など穀物、穀物由来の加工品が値上がりしたうえ、養殖などで飼料となる穀物値上がりで一部の養殖サーモンなども値上がり、関連でサンマも不漁で値上がり、夏の天候不順もあって夏場はレタスなど葉物野菜が値上がり(いまは安値)。その割に、主食であるお米の価格は新米相場が下落して面倒なことになったりしています。