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「無名の高校生にこんな可能性を秘めた子がいるんだ」実力者でありながらプロテストには不合格…プロゴルファー原英莉花を導いたジャンボ尾崎の“意外なアドバイス”

『誰も書けなかった ジャンボ尾崎』より #1

2022/02/04
note

原選手に響いたジャンボからのアドバイス

 この時、原選手のショットが、本来のものではないことは、たまたま居合わせた私の目にもハッキリと分かりました。もともときれいなドローボールが持ち球の原選手。しかしこの日は痛めたヒザをかばっているせいか、ドライバーのスイングが少し詰まり気味で正確なインパクトができなくなっていました。その結果、逆球であるフェードボールが繰り出されていました。

 原選手が望む球筋ではないことは、明確でした。もしこの場に私しかおらず、原選手にアドバイスを求められていたとしたら、「本来のスイングとは違う」と指摘し、元に戻すアドバイスをしたかもしれません。

原英莉花選手 ©文藝春秋

 しかしジャンボのアドバイスは私とは相異なるものでした。

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「今、お前のスイング軌道はフェード系になっている。フェードで攻めたほうがコースの左サイドが消せるから、試合で使えるぞ」

 本来ドロー系の原選手がフェード軌道になっているのならば、自分のイメージと異なるため、当然コントロールにも不安を感じるはずです。しかし求める球筋ではないにせよ、ボールは飛んでいましたし、何よりもフェードを意識したほうが、スイングの抜けがよく、気持ちいいスイングに私の目には映りました。

 フェードボールのほうが、コントロールもしやすいのは確かです。故障したばかりのヒザのこともありましたし、ドローボールは下半身に負担のかかるものです。そうしたすべての状況を加味したうえでのジャンボのアドバイスだったのだと思います。

原英莉花選手 ©️文藝春秋

 これがオフの間であれば、しっかりドローが打てるように時間をかけて改善するようにジャンボはアドバイスしていたと考えます。しかし、シーズン終盤ということもあり、このようなアドバイスになったのです。

 彼女がリコーカップで見事優勝できたのは、彼女の学習能力と柔軟な頭の切り替えがあったからこそで、そのゴルフ能力の高さは言うまでもありません。