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 私も現役時代、私から何も話していないのに練習中に横に来て、いろいろと教える先輩選手がいましたが、それで良くなったことは皆無でした。プロ同士が教え合うことは、最初から「お互いにスイングのことは理解しているはず」という感覚で接しています。これはある意味、有意性と危険性が背中合わせだと言っても過言ではありません。

 なぜならば、お互いに長年の間、異なった感性と身体能力で培ったスイングだからです。ジャンボは、この選手のどこを触っていいか悪いかの判断が的確です。だから、アドバイスを受ける選手も、ジャンボのアドバイスが浸透しやすいと思います。これが、ジャンボにアドバイスを求めるプロ選手があとを絶たないもう一つの理由だと考えます。

 ただ、若い選手がジャンボに直接アドバイスを求めにいくことは、大層勇気がいります。最近では智春君(編集部注:ジャンボの長男である尾崎智春氏)が時々、女子選手をジャンボ邸に連れてくることがありますが、男子選手も図々しく訪ねてみるといいと思います。

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懐の大きさもジャンボ級

 いずれにせよ、ジャンボのスイング理論を聞くだけでも、スイングについての知識が膨らむことは間違いありません。若い選手たちにとって、ジャンボは近付きにくい存在かもしれませんが、それでも勇気をもって門を叩けば、その気持ちを真摯に受け止め、いかなる質問にも真剣にアドバイスを送ってくれることでしょう。ジャンボは、「来るものは拒まず去る者は追わず、再び来るものは、また受け入れる」というスタンスなのです。

星野仙一氏(左)とジャンボ尾崎氏©文藝春秋

 私が、ジャンボ軍団に入り確か10年経過した頃、個人的な理由により、それまで毎年続けてきた冬のトレーニング合宿を離れ、私個人でオフのトレーニングをしようと検討した時がありました。

 しかし、個人で実行することに不安もありました。ジャンボたちとトレーニングを重ねてきたことで、シード選手にもなり勝利を掴んできたので、「万が一成績が落ちたりシードを喪失してしまったらどうなるのか」という懸念がありました。また、ジャンボから何か言われるのではないかと1週間くらい苦悶が続きました。

 意を決して私の気持ちをジャンボにぶつけると、あっさり「分かった。離れてやるのは大変だけど、今までやってきて何をすればいいのかお前なら分かっているはずだ。頑張れよ」という答えが返ってきて私は唖然としました。

「自分は何でこんなに悩んでいたんだろう」と思いました。

 それから私は、若い選手と数人で独自の合宿をスタートさせたのですが、今まで以上に厳しく自分を追い込んでいきました。それから数年が経って、ジャンボに「トレーニング合宿後のラウンド合宿に参加したいのですが」とお願いした時も、今まで何事もなかったかのように「分かった。来いよ」という答えが返ってきました。

 ジャンボとはそういう人間なのです。若い選手たちも、ジャンボと接する中でその人間性を自然と感じていることでしょう。