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「今日は何球打った? やりたくないなら帰れ」ジュニア選手にも容赦ない檄を飛ばす…“ゴルフ界の伝説”ジャンボ尾崎のジュニア指導流儀とは

『誰も書けなかった ジャンボ尾崎』より #2

2022/02/04
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 私も子供たちを見ていて、様々なことに気づかされます。いつでも黙々と練習する子や、その日によって集中力の差が練習態度に出てしまう選手など、子供は個性が強いので、ジャンボもその個性や性格を考えて接しています。

 家庭や学校で何があったのかは分かりませんし、子供は子供で悩みを持っているものです。厳しく思えるジャンボの叱咤も、私から見ると子供たちへの愛情を感じます。

良い球の感覚を体に覚えさせる

 二つ目は、ある程度成績を収めている選手の場合です。このケースでは結果を求める方法を取ります。結果第一主義とは言っても、成長過程には差があります。ジャンボは、それぞれの選手の成長度合いを把握しながらアドバイスを送っているのです。

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 しかし、プロスポーツの世界に足を踏み入れたらそうはいきません。結果を出すまでのプロセスは評価されないのです。しかし焦りも禁物。小さくまとまらず大きく育ってほしいのです。

 ユーチューブやSNSなどで、世界中のプロのスイングをあらゆる角度から見ることができる時代となり、数えきれないほどのレッスン動画も流れています。

 これも、自分なりに上手く解釈し吸収すればプラスになりますが、その半面、頭でっかちになりすぎると、迷いや混乱を招きます。自分のやるべき基本を忘れてはなりません。

 我々のジュニア時代は、トッププロのスイングを観る機会はなかなかありませんでした。自分が打った球を信じるしかありませんでした。要するに形よりも、良い球を打った感覚を体に覚えさせるしか方法がなかったのです。遠回りすることもありましたが、一度感覚を覚えると忘れることはありません。

 ジャンボも、ごくまれに子供たちに動画を撮らせてチェックしていますが、やはり重要ポイントはスイング全体の流れです。「下半身が上手く移動できているか?」「インパクトで体がしっかり球に乗っているか?」などです。

 時々、形についてもアドバイスを送りますが、その場合は1か所しか言いません。ほんの数秒のスイングの中で複数の形を覚えさせようとしても、それはマイナスに働くことが多いからです。

 子供たちの中には、なかなか理解できない子もいますが、ジャンボは決して優しい言葉は掛けません。プロを職業とするならば、目の前の壁は必ず乗り越えなければ、次に進めないからです。