毎月1日に妻から支給される、おこづかい。その額は、2万千円……。

 漫画家・吉本浩二氏(48)が、2万千円で過ごす自身の日常とこづかい制のエキスパートたちが実践するやりくり術を描くエッセイ・コミックが『定額制夫の「こづかい万歳」~月額2万千円の金欠ライフ~』だ。

 吉本氏に、作品がスタートした経緯、予想外だったという読者の反応、こづかい制の導入によって得られたものについて、話を聞いた。

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なぜか“おこずかい内訳グラフ”が大反響

――庶民にとって切実を極めた問題でありながら、ニッチでもある“おこづかいのやりくり”を題材に選んだ先生の視点。毎回読ませていただいては、唸っております。

吉本 そもそもは、お菓子漫画みたいなノリで描いたものが発端なんですけどね。2018年に「モーニング」で読み切りを一本描きませんかと言われて、編集の方と打ち合わせをするはずがいつのまにか世間話になってしまいまして。「おこづかい制だけど、夜中にお菓子を買いに行くのが楽しくて」なんて話してたんですよ。

吉本浩二さん

 で、一向に漫画の話にならないな、いつから始まるのかなと思っていたら、編集さんが「じゃ、これで打ち合わせはOKですね」と切り上げたんですよ。「一体、なにがOKなんでしょうか?」「いまの話、そのまんまでイケるんじゃないですかね」となって、その時はおこづかいよりも夜中にコソコソとお菓子を買いに行く話を読み切りで描いてみましょうとなったんです。それが3巻の最後に入ってる「家族よ! 俺を許してくれ!!」なんです。

――その読み切りが反響を呼んで、『定額制夫の「こづかい万歳」』がスタートしたわけですか。

吉本 自分で言うのも恐縮なんですけど、けっこう反響があったらしくて「連載にしましょうか」と。お菓子漫画のつもりで描いたんですけど、途中で出てくる僕のおこづかい、2万千円の内訳を紹介する円グラフに対して、読者の食いつきがすごかったそうなんです。

 実際、周囲で読み切りを読んでくれた人たちからも「普段、あんなお菓子を食べてるんだ」じゃなくて、「こづかい、ホントにこの額なの?」という驚きの声のほうが多かったんですよ。で、編集さんからも「こづかいをメインにやっていきましょうか」「いろんな人のこづかいの話、面白そうですね」と言われて、おこづかいで何を買ったかとか、どうやりくりするかに軸を移して連載にしようと。

『定額制夫の「こづかい万歳」 ~月額2万千円の金欠ライフ~』より ©吉本浩二/講談社