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「ホントにこの額なの?」48歳漫画家のおこづかい事情“月額2万1000円”が予想外に注目された理由

『定額制夫の「こづかい万歳」』作者・吉本浩二さんインタビュー #1

2022/01/23
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――おこづかい制によって生じている不条理には、どう折り合いをつけられていますか。これも漫画で描かれていますが、仕事部屋の蛍光灯をLEDに換えても、仕事場は先生の部屋だから、まだ蛍光灯は使えるからと、おこづかいから買うようにと奥様に釘を刺されています。

吉本 リサイクルショップで中古の扇風機を買った時もそうでしたね。3千円で買ったら、新品が2千円で買えるぞと言われて、僕のおこづかいから千円引かれて。

 でも、おこづかいから出すと買ったものを大事にするというか。仕事場の蛍光灯を換えた時も、「これ、おこづかいで買ったんだよな~」みたいになって、ちょっと楽しくなるんです。自分のものではないと思っているんですけど、愛着が湧くというか。そう思うようにして、不条理をやり過ごせているんじゃないですかね。

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『定額制夫の「こづかい万歳」 ~月額2万千円の金欠ライフ~』より ©吉本浩二/講談社

千円を残してくれたのは、妻の愛情と温情?

――扇風機もなかなかでしたが、やはり不条理の真骨頂はカルピスではないかと。水道水で作ったカルピスで仕事の疲れを癒そうとする先生が、3杯目に入ろうとしたところで「そんなガブガブ飲まないでよ!!」と奥さんに叱られます。思わず先生は「カルピスぐらい自由に飲ませてくれよ!!」と咆哮します。こうした扇風機やカルピスのくだりによって、奥様にキツい方のイメージがつきかねない危惧は抱きませんでしたか?

吉本 僕が抜けているのか、あまり危惧しなかったんですよね。なんでですかね。

――いや、奥様が家族のことを第一に考えて行動している姿は必ず描かれていますから、誰も本気でキツいと捉えていないとは思います。今日も奥様から、先生を通して埼玉の銘菓“十万石まんじゅう”を手土産として頂いておりますし。ただ、ああした描写を入れることを奥様に相談されているのかなと。

吉本 「この時、どう言ってたっけ?」みたいなことを妻に確認と相談をしつつ、セリフを書いたりはしていますけどね。彼女は自分の印象が悪くなるじゃないかみたいなことは言ってこないですね。そこは自分で言うのもなんなんですけど、一応信頼関係があるからこそだと思うんですけど。

 お笑いコンビや夫婦漫才に近いんじゃないかなって。漫才の人たちがお互いに冗談でそういうことを言い合うみたいに、うちの夫婦もそんな感じで。まぁ、僕らの場合は冗談でもなくてけっこう本気なんですけど、そんなニュアンスでやりとりしてるし、僕も描いちゃってるんでしょうね。

『定額制夫の「こづかい万歳」 ~月額2万千円の金欠ライフ~』より ©吉本浩二/講談社