――先生のおこづかいの額、2万千円は奥様が決めていますが、そこにも優しさが反映されているのではないかと。それまでの3万円の3割引きで2万千円ですが、キリよく2万円にされてもおかしくなかったんじゃないかと。3割引きの大義名分で千円を残してくれたのは、奥様の愛情と温情ではないのでしょうか。
吉本 いやー、そこは単純に「3割引き」にしたかったんじゃないですかね。彼女は数字にシビアで生真面目な人だから、厳密にやっていきたいと……。
……でも、そう聞かれて、もしかしたら千円は温情みたいなところもある気もしてきました。千円があるのって、金欠の月末に効いてくるんですよね。最後の最後で、千円あって助かるみたいな。
僕がおこづかい生活で得たもの
――千円の有無は大きいですよね。また、月末で金欠になると余計に「欲しい」「買いたい」の欲求が高くなるといいますか。先生はそうなった場合、どのような対処をされているのでしょうか?
吉本 たとえばAmazonを見ていて欲しいものがあった場合、僕は一旦カートにバンバン入れるんです。とりあえず、入れておけば意外と気持ちが安定するんですね。時間が経つと、「なんだって、こんなのを入れてたんだろう」と思えるものが出てくるので、そこから「やっぱり、これは欲しいな」と吟味していく感じですよね。
――先生はスマホ決済やクレジットカード決済はされていないのですか。
吉本 スマホではなにも買わないですね。ネットショッピングの時はクレジットカードですけど、妻は僕のAmazonのアカウントを知っていてチェックができるんですよ。なので、Amazonで余分に使っていたら次の支給時には、そのぶんを引いたおこづかいを渡されるようになっています。
――おこづかい制の生活を送られてきて、なにかしら見えてきたもの、得たものはありますか?
吉本 僕の独身時代のお金の使い方って、さきほど話したように“安物買いの銭失い”だったんですよ。高くても長く使えるものではなく、安くてすぐに使わなくなるものばかり買ってきたんですよ。
妻は「こんなにいいものを安く買えた」みたいなのが好きで、それができるタイプなんですね。たぶん、節約するのが好きというよりも、得することが好きみたいな。僕は損するのは嫌ですけど、損ばかりしている。
そこを妻に引き締めてもらったおかげで、衝動買いがなくなりましたね。吟味して買う、そうやって買ったから愛着が湧く。もし、僕主導でやってたら、家の生活はかなり危なくなってたんじゃないかと。それを考えると怖くなってきますね。
写真=釜谷洋史/文藝春秋