――先生としては、自身のおこづかい事情、ひいては吉本家の経済状況をさらけ出すことにもなるわけですよね。すでに読み切りで2万千円であることを公表しているとはいえ、躊躇しませんでしたか?
吉本 そんなに躊躇しませんでした。まぁ、日記みたいに残せればいいかなくらいの思いがあったんです。まだ子供も赤ちゃんだったので、家族のことも描けば思い出にもなるんじゃないかって。
「漫画家って、夢のある職業じゃなかったの?」
――反響の大きかったおこづかいを軸にして連載を始めたわけですから、のっけから読者の反応は良かったのではないですか?
吉本 笑って楽しんでもらえているのかなと思っていたんですけど、「みじめだ」「悲しい気持ちになる」なんて声がけっこう届いて、意外と「え?」という感じだったんですよね。さらに「大の大人が駄菓子を買うのを迷っていて、情けなくなる」とかもあって「あれっ?」と。
1話、2話は僕自身のことを描いているんですけど、それが掲載された時はTwitterで『ONE PIECE』の尾田栄一郎先生と比べられましたね。尾田先生は「バーベキューで焼く肉はブロック肉」と言っているのに、吉本はカルビーのポテチ、明治のスーパーカップ、雪印のコーヒー牛乳で「豪華だなぁ~!!」だってよ、みたいな投稿をされちゃって(笑)。
「漫画家って、夢のある職業じゃなかったの?」と思われたんじゃないですかね。僕としては、地味な漫画家ってこんな感じですよ、というのを少しでも知ってもらえればと思ってたんですけどね。
――コンビニでお菓子を買ったり、自販機でコーラを買ったりする描写に対して、「こづかいが少ないなら、値段の安いスーパーで買え」といった声も多く寄せられたそうですが。
吉本 いまだに言われますね。たしかに、お菓子はコンビニで買っちゃったりするので、矛盾はしてるんですけど。コーラに関しては、自宅の前に自動販売機があるんですよ。それもよくないんですよね。
――スーパーで買えば安いのは重々承知していますけど、それをしない数十円の浪費がおこづかい制のなかでは至高の贅沢になるといいますか……。
吉本 そうなんですよね。イオンなんかで大量に買ってストックしておけば経済的だけど、飲みたい時に自販機まで行って「どれにしようかな~」と選んで、買って、飲むのが、すごく楽しいんですよね。