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料金は20分1万1000円 飛田新地に次ぐ規模の「ちょんの間街」大阪・松島新地に起きた2つの変化とは

近隣の「かんなみ新地」では一斉閉店も

「ちょっと、お兄ちゃん」。店先を通ると間髪入れずに声が上がる。

 視界に入るやいなやの早業で客をつかまえるのは、「やり手婆」と呼ばれる客引き役の女性の仕事だ。

 声がするほうに視線を移すと、大きく開け放たれた玄関先から女性が笑いかけてくる。ナース風の衣装やランジェリー、なまめかしいドレス。いずれの衣装も、女性たちの豊満なバストを強調するようなデザインになっている。

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 2021年の年の瀬が迫っていた12月のある日、「松島新地」の名前で知られる「ちょんの間街」での光景だ。昭和レトロな長屋風の建物が軒を連ねる街は、かつては遊郭として賑わい、1958年の売春防止法施行までは「赤線(売春公認)地域」として街の歴史を紡いできた。

給仕と客との自由恋愛に店は関知しない

©文藝春秋

「警察当局の摘発を免れるために多くの店が、料亭として営業許可を取得しています。料亭で『給仕』として働く女性が客と恋愛関係になり、本番行為に及ぶ。表向きは、『給仕と客との自由恋愛に店は関知しない』ということになっていますが、実際は売春行為を正当化するための抗弁に過ぎません」(地元事情通)

 大阪にはこの他、全国的にその名が知られる「飛田新地」がある。通天閣にほど近い大阪市西成区にある同所は、約160店が軒を連ねる日本最大の「ちょんの間街」とみられる。「約90店舗が営業している」(同前)という松島新地は、その飛田新地に次ぐ規模とされる。

 最寄り駅は、大阪市西区の地下鉄中央線、阪神なんば線の九条駅。降り立ってすぐの「ナインモール九条」という商店街をしばらく歩くと、通りの両端にアーチ風に立つ街灯に二つ並んで設置された「松島料理組合」の看板が目に飛び込んでくる。

 歴史ある街の入口である。