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ドラマ界が密かに待ち望む、失言や失態のスター

 さらに、ここ最近は「プロンプター丸読み」や「読み飛ばし」がトレンドだった。透明のプロンプターに映る文言や、漢字にルビをふったカンペを読みあげるだけの総理大臣なんてあまりにひどい。言葉の意味もわからず、文脈がつながっていないことにも気づかず。あまりにひどい現実だが、当然ドラマにも登場した。

『七人の秘書』(2020年・テレ朝)で、財務大臣を演じたのが岸部一徳。記者会見の場には透明のプロンプターが用意され、岸部はもっともらしく読みあげるだけ。ただし老眼で細かい字が読めず、数字もケタを間違えて読む始末。裏方は焦って、途中で文字を大きくするというシーンが描かれていた。

 ほかにも、「やたらパンケーキ食ってるおじさん」とか「上級国民」とか、はやりすたりがある。ついこの前は実に懐かしいネタを観た。年末に放送した『99.9-刑事専門弁護士―完全新作スペシャル新たな出会い篇』(TBS)で、「入るはずのない分厚い札束をセカンドバッグに入れさせる」シーンがあった。

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 政治家ではなく、政治家を陥れようとする会社社長(演じたのは山西惇)だったが、元ネタは明らかだ。2013年、献金疑惑を追及され、大嘘こいて赤っ恥をかいた元都知事である。

 さて、本題へ。ドラマ界でネタにされる政治家が多いのは、ある意味「傾国の悲劇」なので笑っている場合ではないが、やはり数年に一度は「スター」がほしい。脚本家や演出家が、ドラマ界が密かに待ち望む、失言や失態のスターが。

10年に一度の逸材「スター・小泉進次郎」

 そこで彗星のごとく現れたのが小泉進次郎である。元首相の息子で、ルックスもよく、選挙の応援演説がすこぶる人気。

写真3_国連気候行動サミットより帰国した小泉進次郎環境相(当時)©文藝春秋

 おまけに妻は滝川クリステル。地方の名産物と方言を口にするだけで、なぜこんなに人気なのかさっぱりわからないが、聴衆がうっとりしていたのは事実。以前、池上彰の選挙番組で、恒例の毒を含む質問をさらりとかわした姿を観て、「この笑顔は信用してはならぬ」とも思った。

 そんな人気者の進次郎が、2019年に環境大臣に就任してから潮目が変わった。発言はするが具体性のなさに、質問には答えず中身のないエピソード(ノドグロだのステーキだの)や、ただ熱いだけで薄い思いをとうとうとしゃべる姿に、主語が迷子で意味不明の構文に、雰囲気だけでモノを語る頼りなさに、世間はどよめいた。

 彼の一挙手一投足が注目され、もれなくネット大喜利が始まり、迷言がまとめサイトに。進次郎が言いそうなセリフがまことしやかに語り継がれて、独り歩きしているケースもあるようだ。そう、ドラマ界にとって進次郎は、10年に一度の逸材である。ちょっと言動を振り返ってみる。