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「セクシー」「おぼろげながら浮かんできた」テレビドラマが“進次郎構文”をネタにするまで

政界の迷言王子・小泉進次郎から2022年も目が離せない

2022/01/22
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なーんか言ってるようで、なーんも言ってない

 実は、進次郎の本音に迫るドラマが作られていたのも忘れてはいけない。『今ここにある危機とぼくの好感度について』(2021年・NHK)は名作だった。主演は松坂桃李。元アナウンサーで、母校である国立大学の広報課に転職。

 モットーは「極力意味のあることは言わない」。好感度だけで生きてきた男の役だ。アナウンサー時代、復興が遅れている被災地へ取材に行ったにもかかわらず「なんも言えないですね」しか言わない。

 スポーツの報道では「やっぱり僕、スポーツっていうのは体を動かすことだと思うんです」としか言わない。その本音は「思っていることをポロッと言ったらどこに差し障ってどこからクレームくるかわからないから」。「なーんか言ってるようでなーんも言ってない」のが一番いいという信条の持ち主。

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 この大学は、人気教授がデータの不正改ざんを行っていたり、イベントに呼ぶゲストにトラブルが浮上したりで問題は山積み。松坂は隠蔽体質が甚だしい大学理事の手足となり、「好感度だけで生きてきた薄っぺらい自分」と向き合うという物語だった。

政治家としては信用しないが…

 学長の記者会見の内容に関しても、松坂は持論を展開。「会見に中身がなければ、記事として大きくとりあげようがなくなり、たいして騒がれることなく、さらーっとしれーっと終われるかもしれない。清潔感と笑顔、そして意味のあることを言わない。嫌われる原因はいつも意味だ。批判および誤解を受け、炎上を招く。意味を極力もたせてはいけない」という。はああ、なるほどと唸ってしまった。

 進次郎のオチのないエピソード&ポエム調も、もしかしたら戦略なのか。愚者を装い、客寄せパンダとしての役割を果たし、国民の「意識を変える」のが本懐だとしたら侮れない。別の意味で注目はされているし、レジ袋有料化という愚行も実現させた。

 そういえば、菅首相退陣の際に記者団の前で、なぜか涙ぐんだりもしていたね。なぜ今そこであなたが泣く? 「いっぱい思い出すとね……言葉浮かんできますけど」という割に具体的な言葉は出てこない……。政治家としては信用しないが、ドラマ界のネタ元としては今後も刮目していこう。

「セクシー」「おぼろげながら浮かんできた」テレビドラマが“進次郎構文”をネタにするまで

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