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最高裁「女性は歓迎しない」

 なお“任官差別”とは、女性修習生任官拒否問題ともいわれ、1970年代前半に盛んに問題になっていたので、ここで若干触れておこう。

 2年間の司法研修を終えると、修習生らは自らの職業として、裁判官、検察官、弁護士の三者のいずれかを選ぶ。任官とは裁判官、検察官になることだが、特に裁判官は成績が良くてエリートでなくてはいけない……といった傾向が顕著で、最高裁は任官者を厳しく選別していた。1970年代まではまだ戦後のレッドパージのなごりも強く、左翼系の思想をもつ青年法律家協会の会員を排除し、同じく女性についても、「歓迎しない」と最高裁は言明していた。

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 女性を歓迎しない理由として、最高裁側が繰り返し表明していたものはというと、

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「第一線の所長が(女性を)歓迎していない」

「夫婦とも裁判官の場合、任地の調整が大変になる」

「妻が夫の足を引っぱる結果になる」

「産前産後の休暇などで仕事に支障が出る」

「労組対策や支部長として多数を統率するのに女性は向かない」

「成績が同じなら女性より男性をとる」

「夫婦二人で志望してきたら、一人は辞退してもらう」

「家庭で妻の全面的サービスを受ける裁判官とそうでない裁判官とでは、仕事の上で違う」

 などであった。いずれも1970年から75年にかけて、当時の最高裁人事局長や研修所の所長ら幹部による発言であった。

 1976年に入所した私たち女性研修生が、こうした任官差別問題に神経質になっていたのは当然のことであった。

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