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 シャンゼリゼも同じだ。12時なのにカフェ・レストランはガラガラ。この辺りはビジネス街だから、テレワークが義務化されていることも影響しているのだろう。

 抗原検査のテントが目立つ。近くの薬局の出店だ。ここで検査をして、薬局で結果をもらう。フランスの健康保険に入っていてワクチン接種証明がある人は無料。それ以外は25ユーロである。薬局はオンラインで当局に報告登録する。

 さすがにクリスマスから大晦日には、人出があって1日50人から60人ぐらい検査したという。地方やEU諸国から来た観光客と地元の人が半々ぐらい。観光客は列車に乗ってきたし、人混みを歩いたが大丈夫だったのかという確認、地元の人は会食したりするから用心のために、だとか。あの頃、検査数は、全国で1日150万にのぼった。

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トロカデロ広場で衛生パス表示を求める表示を出したカフェ(筆者撮影)

なぜ1日150万人も検査をするのか

 なぜこんなに検査するのか。もちろん、感染の実態がつかめるということもあるが、なによりも2020年春の失敗を繰り返さないためである。

 フランスではもともときっちりしたパンデミック対策ができており、用意周到に新型コロナ対策に臨んだ。ところが、大きな誤算があった。インフルエンザなどと異なって無症状者が感染させるということである。

 本人は軽く終わってもうつされた方は重症化する。新型コロナは、気候の影響はあるにしろ、感染者との接触を少なくしない限り減らないということは一昨年の世界中の経験ではっきりしている。

駅前には抗原検査用のテントが(筆者撮影)

 そのために症状がなくてもできるだけの検査をして、感染者は自主隔離することが必要になるというわけだ。なおフランスでは病欠は有給休暇と別で、感染者も濃厚接触者もすぐに取れる。病欠期間中は健康保険から給与の60~90%が保証される。フランスでも当初は日本と同じく検査を感染者に絞っていた。しかし第1波が収まった後、大きく方向転換したのである。

 フランスでは、昨年末から今年にかけて、抗体カクテル療法の一つ「ロナプリーブ」はオミクロンには効かないということで使用中止になり、経口薬「モルヌピラビル」も効果が薄いので政府が発注を取消した。結果として、まだ期待される薬はあるとはいえ、現実に広く効果が出ているのはワクチンだけで、だからこそ、そこに「コロナと共に生きる」道を見つけようとワクチン接種と検査に躍起になっているのである。