「コロナと共に生きる」道の“悩みの種”
その点、悩みの種は学校だ。とくにワクチンの接種が始まったばかりの小学校と幼稚園保育園である。1月3日の新学期から濃厚接触者は薬局で抗原検査または即時PCRを実施し、2日後、4日後にセルフ検査を行うとした。
ところが、検査やセルフキットは無料で経済的負担はないが、いちいち検査に付き添わなければならない親の労力が大変だということで、1月14日から3回ともセルフ検査にした。学校側としても事務処理に時間がとられすぎる上に、政府がそれらの転換を突然発表して方針をコロコロ変えている。
そのしわ寄せはすでに噴出しており、1月13日には、教師へのマスク配布や教室のCO2検知器の導入が遅れているなどの理由も加わって、全国でストライキが行われた。1週間後の1月20日にも連帯保健省への抗議行動があった。
「衛生パス」のワクチン未接種者でも陰性証明を出せばいい、という部分は当初の72時間前から48時間、24時間と減り、検査も有料化された。さらに、国会で新しい法案が通りこの24日からは「衛生パス」は廃止され、かわりに接種者だけに限定される「ワクチンパス」になる。
オリヴィエ・ヴェラン連帯保健大臣が、年の初めに「オミクロンはあまりにも感染力が強すぎるので、絶対的なロックダウンをしない限り、全面的に止めることはできない」といっていた。「ワクチンパス」によって、陰性証明だけではダメになるから未接種者はさらに行動制限される。つまり実質的な絶対的ロックダウン状態にするのである。
20日、カステックス首相が会見し、24日から16歳以上への「ワクチンパス」義務化(12-15歳は24時間以内の陰性証明でも可)と強化する代わりに次の緩和策がおこなわれると発表した。
・2月2日から映画館劇場競技場などの人数制限撤廃(マスクは着用)、野外でのマスク着用義務終了。
・テレワークは奨励するものの現在の週3~4日の義務は廃止。
・2月16日、ディスコ再開、立席コンサート解禁、競技場映画館長距離列車の飲食解禁、カフェのカウンターでの飲食解禁。
昨年1月にカステックス首相が夜間外出禁止強化や出入国禁止発表の記者会見をしたとき、「約2万7000人が入院しており、そのうち3000人以上が重症者である」といっていた。今は、1月20日現在で入院2万7931人、重症者3842人である。だが、病院のひっ迫状況はまったく同じであっても、「制限」ではなく「緩和」という1年前とは正反対の判断が下されている。
もっとも感染学者などからは「時期尚早」という声も上がっているが、少なくとも、別のタチの悪い変異種が出てこない限り、もはやフランスでは夜間外出禁止やロックダウンが行われることはなく「コロナと共に生きていく」ことはまちがいない。
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