連日感染者数が最多を更新し、「このままのペースでは東京では1日1万8000人、全国で10万~15万人の感染」という報道もされた、“第6波”に見舞われる東京。感染力の強いオミクロン株の脅威の前に、対策現場はまさに正念場を迎えている。

 一方で、この感染爆発を一足先に経験した欧州では、日本に置き換えれば「1日100万人」という感染の大爆発が起こっている。街の約27人に1人、いわば職場や学校、近隣の誰かが日々感染していく状況では、どのような日常が生まれているのか。在仏ジャーナリストの広岡裕児氏が緊急寄稿した。

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第3波から様変わりしたパリの日常

 フランスの新型コロナ新規感染者数が連日40万人を超えている。パリ首都圏では27人に1人がかかっている。

連日50万人近い感染者数を記録するフランス。日本でいえば「毎日100万人が感染する」という世界は、一体どのようなものなのか(筆者撮影)

 1月3日からイベントは3週間全員着席で、室内は2000人、野外は5000人に制限された。先月からのディスコの閉鎖は継続、長距離列車での飲食は禁止となった。

 しかし、マスク着用など今まで通りの感染対策はつづくものの、時短営業など日常生活にかかわる規制はない。せいぜいカフェで立ち飲みはできなくなったぐらいだ。フランスでは町や駅にほとんどトイレがなく、必要な時にはカフェで利用して立ち飲みのコーヒー150円ぐらいを払ったものだが、着席して倍払わなければならなくなった。

シャンゼリゼ通りの凱旋門(筆者撮影)

 それにしても昨年とは大違いだ。あの頃、第2波が終わりきらないところにアルファ変異株が襲ってきて第3波が始まった。夕方6時には店は閉店。翌朝6時まではやむを得ない理由以外は外出禁止。映画館、美術館などはずっと営業停止のままだった。さらに、1月31日から、特別な事情がない限りEU域外からの出入国が禁止になった。フランス国民にも適用され、ビジネスでもだめだった。また、食料品以外の2万平方メートル以上の商業施設は閉鎖された。

何が状況を変えたのか

 この違いの理由はワクチンだ。

 昨年は、ようやく1月18日に75歳以上の者が接種可能になったばかりであった。アストラゼネカ社の契約違反の英国優先などあって供給が遅れたが、EUが緊急支援してファイザー社、モデルナ社のワクチン製造のさまざま過程を域内各地で実行する態勢をつくった。競合会社も参加し、その結果ワクチン不足はなくなった。いまやブースター接種もすぐできるようになった。日本に多くの欧州製のワクチンが入っているのには、こうした背景もある。