1ページ目から読む
4/4ページ目
本当は、世之介の一生を1年ごとに書きたいくらい
――『横道世之介』はバブル期の話ですよね。当時の流行などが細部までよく伝わってきましたが、あれはご自身がつけていた日記を参考にされたそうですね。
吉田 日記というと大げさですけれど、今もメモはつけています。今日なら「文春で取材を受けた」くらいのものですが。今回の連載も当時のメモを読み返しながら書いていますが、2007年から2009年にかけての話なので、そんなに今と大きく違うとは感じないですね。
その前の『続 横道世之介』は、1993年から1994年にかけての話でしたから、ずい分違いましたね。今は安い洋服なんて当たり前でしょう? スーツだって2万円くらいで一式揃う。でも当時は洋服が高いんですよ。メモを見ると、セーターを分割で買っていたりする。
――世之介の話は三部作で完結ですか。
吉田 ひとまずはそうですね。本当は、世之介の一生、0歳から亡くなるまでを1年ごとに書きたいくらいなんですが。さすがにそれはできなくても、スピンオフ的に「少年横道世之介」はやりたいなと思っています。
――以前、執筆中の作品の登場人物に影響を受けるとおっしゃっていましたよね。『太陽は動かない』みたいなスパイものを書いている時はきびきび動いていたけれど、世之介を書いている時はだらだらしてしまう、って。じゃあ今は……。
吉田 だらだらしています(笑)。
(取材・構成:瀧井朝世、撮影:深野未季/文藝春秋、初出:別冊文藝春秋2022年3月号)