第3話、衝撃の入浴シーン。雅子さんが怒った理由は……
不本意な出来事があって、マンガ化の話をもう終わらせたいと雅子さんは考えたことがありました。その時、マンガチームの答えはきっぱりしていました。
「雅子さんが納得できないなら、いつでもこの話を終わらせる覚悟があります」
実際に起きた出来事を描くからには、納得してもらうまで話を重ね、承諾を待つ。手間暇かけた作品作りが結実し、現実に基づいた物語なのだと実感させてくれます。
「私の趣味は夫・トシオなんです」と語るマサコさん。「私の雇用主は日本国民なんですよ」と語るトシオさん。作品中で印象的に使われているこれらのセリフも、実際に語られた言葉です。雅子さんと私の共著『私は真実が知りたい』(小社刊)にも出ています。マンガチームは事前にこの本を読み込んでから制作に入りました。第1話の最後で丸々1ページこの本を紹介しています。小学館と文藝春秋、出版社の垣根を越えた連携で作品作りが進みました。
それでもトラブルは起きます。ネタばらしになりますが、「がんばりょんかぁ、マサコちゃん」第3話では、冒頭に衝撃の「入浴シーン」が出てきます。夫婦でお風呂に入っています。これに雅子さんが怒りました。俊夫さんが亡くなる前日、二人一緒にお風呂に入ったのは事実です。そして、雅子さんは入浴シーンを描かれたこと自体に怒ったのではありません。俊夫さんが笑顔で描かれていたことに怒ったのです。
「だって亡くなる前の日なんですよ。元気がなくてお風呂にも入らないから、元気づけるために一緒に入ったんです。だから私は明るくしてたけど、夫が笑ってるはずないじゃないですか! 亡くなる前の日に笑顔だったなんて、そんな風に描かれたくないです」