故・赤木俊夫さんの手記が公開され約2年。今週、妻の雅子さんが主人公のマンガ連載が始まった。第1話のカットと共に、事件を追い続けた相澤冬樹氏が解説する。

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財務省の公文書改ざん事件がマンガに

 帰宅するバスに偶然、夫が乗り込んできた。車内での何気ない会話。二人で見る六甲山からの夕暮れ。平凡すぎるけど、それが幸せだった。失った今、初めて気付いた。

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 財務省の公文書改ざん事件で夫を亡くし「真実が知りたい」と国を相手に裁判を起こした赤木雅子さん。本誌で繰り返し奮闘を報じてきた、その雅子さんがマンガの主人公になりました。その名も「がんばりょんかぁ、マサコちゃん」。赤木さん夫妻の故郷の岡山弁で「がんばってるかい」という意味です。小学館のマンガ週刊誌「ビッグコミックスピリッツ」で1月24日発売号から連載が始まりました。

 最初に紹介した場面は作り話ではなく、現実そのものです。夫、俊夫さんとの暮らしで「一番幸せだなぁって感じたのって、どんな時でしたか?」と雅子さんに尋ねた時の答えがそのまま第1話のラストシーンに。幸せな日常が奪われた悲しみを見事に描きました。

Ⓒ宮﨑克・魚戸おさむ/小学館

雅子さんの思いを作品に

 原作・宮﨑克さん、作画・魚戸おさむさん、そして担当編集者。雅子さんが「マンガチーム」と呼ぶ制作陣は、神戸の自宅を訪れ祭壇に手を合わせ、雅子さんの話を聴き、思い出の品や文書を見せてもらい、俊夫さんが亡くなった場所を確かめました。第1話の冒頭、自宅で夫が亡くなっているのをマサコさんが見つけるシーンは、この時の取材に基づいています。リアルでかなりショッキングですが、雅子さんは納得しています。

 事件の舞台となった財務省近畿財務局、改ざんの発端となった国有地、国との闘いの場である大阪地裁や代理人弁護士の事務所にも足を運びました。現実に即して物語を描き、雅子さんの思いを作品に吹き込むためです。とはいえ、マンガチームが最高に盛り上がったのはJR新長田駅前。鉄人28号の巨大モニュメントを前に、子どものようにはしゃいで写真を撮っていました。マンガ愛ですから、仕方ありませんね。

マンガチームは、雅子さんが住む神戸を訪れた ©相澤冬樹