ゴシップを主題に据え、黒木華をメインに起用したところまでは大正解。どんな刺激的なドラマが展開されるのか期待を抱いた。
大手出版社、クスノキ出版の経理部員、瀬古凜々子(黒木華)が、ジリ貧のネットニュースサイト「カンフルNEWS」に異動となり、物語が始まる。
伝統ある文芸大手、クスノキ出版の社屋近くには、「カンフルNEWS」編集部の入る別館がある。編集長の山田(生瀬勝久)をはじめ五人の編集部員は、誰ひとりスクープ記事を取る気力も体力もない。
どうせ、ウチなんか。負け犬根性が染みついた部員たちは、他社の記事をコピペしたコタツ記事でお茶を濁す駄目っぷりだ。
凜々子の同期、根津(溝端淳平)も新人時代の覇気は失せ、取材もせずに他のサイトの記事をタダ貰いして何の疑問も感じない。
経理部時代は地獄の番犬(ケルベロス)と呼ばれた辣腕の凜々子はサイトの目標は月間五千万PV(ページ・ビュー)と事もなげに言う。いまの百倍。血気にはやるわけでない。坦々と、企業や有名人のスキャンダルを洩れなくチェックし、細部からこぼれた嘘を嗅ぎとると、正面から取材だ。
第一話ではゲーム・アプリ会社のパワハラを告発する投稿を下馬(野村周平)が取材もせずに記事にして炎上する。凜々子は冷静にまずは謝罪、次いでネタ元の事実確認を提案する。
部員たちは相手にもしない。ゲーム・アプリ会社は美少女キャラで鉄オタを釣る萌えゲーで一躍、大成功した。ネットの告発記事に「俺が生んだキャラをパクッた」の一文があった。凜々子はここを攻める。鉄道オタクの人を取材したことがあると、優しい編集長も協力する。ゲーム会社の美少女キャラ剽窃を、山田と凜々子は暴く。
謝罪記事も書き、一方で彼らのキャラ盗作も記す。思いだすなあ、凜々子のような記事を書いた男を。
かつて「噂の真相」という名物雑誌があった。発行人は岡留安則。不敬記事を掲載したと右翼に抗議されたときは「臣、岡留は」で始まる大時代な謝罪記事を見開きで掲載し、読者をアッといわせた。
検察幹部の醜聞を書き、別の事件で起訴されたときは徹底抗戦した。毎号、大ネタ、小ネタのゴシップが満載だ。「よく、こんなにネタが集まるな」。そう訊くと「向こうから教えてくれるの。特ダネを潰された週刊誌の記者や、大手紙の記者が腹を立て、ウチにタレ込むんだよ」と笑った。肝が据わっていたな。
黒木華は文句なしの演技だ。しかし作りがいまひとつ。ゴシップが思想にも勝り、三流メディアがときとして大手を凌ぐ。そこまでゴシップの力を信頼すれば新編集長の黒木華と部員の小気味よい奮闘で視聴者を掴むことが出来たのに。
INFORMATION
『ゴシップ#彼女が知りたい本当の○○』
フジテレビ系 木 22:00~
https://www.fujitv.co.jp/gossip/