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Edy、Suica、ペイペイ…日本の電子マネーはなぜ統一されないのか? カンボジアで活躍中の第一人者が語る“日本特有の理由”

Edy、Suica、ペイペイ…日本の電子マネーはなぜ統一されないのか? カンボジアで活躍中の第一人者が語る“日本特有の理由”

「Edy」開発者・宮沢和正さんインタビュー #1

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バコンでカンボジアは一躍、電子マネー先進国に…!

 日本ではいま、大手企業がこぞって電子マネーを開発し、いくつもの決済システムが乱立している。大きな狙いは「顧客情報」を集めることだ。カンボジアも、バコン開発に乗り出した5年前は同じ悩みを抱えていたという。

「カンボジアの通貨であるリエルは紙幣1枚の価値が低く、持ち歩くのに大量の紙幣を持たないといけない。とてもかさばるんです。また、銀行口座を持っている国民は全体のわずか2割しかおらず、クレジットカードも使えません。

 一方、誰でも持っているのがスマホで、普及率は国民全体の150%。成人なら仕事用とプライベート用など2台持ちが当たり前です。だから電子マネー決済が主流になったのは必然ですし、田舎の露店ですら決済ができます。

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 これに目をつけた企業は、こぞってQRコード決済の電子マネーを開発しました。決済端末の導入コストも低い。ただ、なかには店に金が振り込まれる前に倒産する企業があるなど有象無象がひしめく状態となり、中銀は危機感を持っていたんです」

 

 一般的な電子マネーは、月末など一定の期日にならないと店に金額が振り込まれない。だが、バコンは受け取った側の店舗がすぐにお金として使用することが可能だ。また、前述のようにカンボジアでは銀行口座を持つ人が少ないため、送金にはバイク便などを使うことが主流だった。当然、送金手数料は高い。カンボジアはマレーシアなど近隣諸国に出稼ぎに行くケースも多く、海外送金となれば尚更だ。

実際にカンボジアでバコンが使われる様子

 一方で、バコンはスマホがあれば、国内の送金手数料は無料。海外送金も大幅に手数料が下がり、リアルタイムで安全に送ることができる。

「これまでは家政婦として隣国に出稼ぎに行った妻が子供に送金しても、夫がギャンブルに使ってしまうなんて話もありました。バコンなら学費であれば学校に、治療費であれば病院に直接振り込めます」

 バコン導入から約1年後の2021年11月末には、既に国民1670万人のうち、約2分の1にあたる790 万人が利用している。

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