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日本人は電子マネーという財布を何個も持たないといけない

 その結果、2007年にはセブンイレブンで使えるnanacoと、イオングループのWAONがリリース。近年ではペイペイなどのQRコード決済ができる電子マネーも爆発的に普及し、乱立状態となっている。ここに、電子マネーの“オールジャパン”の構想は潰えたのだ。

 宮沢さんは言う。

「結果として、日本人は電子マネーという財布を1人が何個も持たなければならなくなってしまいました。そういう意味で、電子マネー創設に携わった私にも責任があります。

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 私が今日本でやろうとしているのは、この電子マネー間で自由にお金を出し入れできる、橋渡しとなる基軸の電子マネーをつくることです。現在は一度Suicaの電子マネーにしたら、ペイペイには変えられませんし、使える店も変わります。そうじゃなくて、基盤となる1つのデジタル通貨を持てば良い。『キャッシュレス』じゃなくて、『デジタル通貨』なんです。実際、カンボジアでは既にそうなっています。

『お年寄りはどうするんだ』といった声もあがりますが、カンボジアでは世代を問わず電子マネーが流通している。10年前ならともかく、今のお年寄りは十分、電子マネーにも対応できるはずです」

 

 宮沢さんは「Edyで私ができることはやり尽くした」として、2017年にソラミツに入社。

 その直後、冒頭のようにカンボジア中銀から連絡が入り、バコン開発に奔走した。

カンボジア国立銀行を訪れた宮沢さん

 ブロックチェーンの世界のプラットフォームを決める「ハイパーレジャープロジェクト」では、IBMやインテルと並んで、ソラミツの技術が選ばれるなど「ブロックチェーンにおける『アンドロイド』をつくる」べく、最先端での戦いを続けている。

 2020年には日本でも、提携先の会津大学で日本初のブロックチェーンによるデジタル地域通貨「Byacco(白虎)」を導入。今後は地銀とも連携して「民間主導で、日本のデジタル通貨のインフラをつくる」と意気込む。

 だが、ここでひとつ疑問が残る。

 日本の通貨の中心である日銀は、なぜ動かないのだろうか? そこにはある日本特有の理由があるという。また、その先にある国際的な危機とは――?

インタビュー撮影=上田康太郎/文藝春秋

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