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“過去最低視聴率”だったNHK紅白の総合演出が語る「紅白=男女対抗から変えられたこと、変えられなかったこと」

福島明さんインタビュー #1

2022/01/31

「恥ずかしながら、最低視聴率を叩き出しまして…。ただ、視聴率が話題になるNHKの番組は紅白と朝ドラと大河ぐらいなものなんで、それだけ関心を持ってもらえてるとポジティブにとらえています」

 取材前にこう明かしたのは、2021年の大みそかに放送されたNHK紅白歌合戦で、総合演出を担当したNHK制作局チーフ・プロデューサーの福島明さん(40)。今回はテーマに「Colorful~カラフル~」を据え、「紅組司会」「白組司会」をやめて司会の3人が出場歌手を応援。紅白の基本コンセプトを新しいものに変えようと制作側で中心的な役割を担った一人だ。賛否が分かれた紅白を振り返り、今だから話せる一夜限りの番組に込めた思いと、その舞台裏についてじっくり聞いた。(全2回の1回目/後編に続く)

第72回NHK紅白歌合戦で、総合演出を担当した福島明さん

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100人いれば100人の紅白論がある

――今回の紅白に対しては、放送前も放送後も、いろいろな意見がありました。「コンセプトを変えながらも、続いて行って欲しい」と好意的な人もいれば、言葉を選ばずに酷評する人も多かったです。

福島 そうですね。賛否両論、それはそれでいいと思ってます。100人いれば100人の紅白論があるから。そもそも、批評されるテレビ番組ってあまりないじゃないですか。観てくれた人も観なかった人も、みんな気になるのが紅白なんだと思います。

――いち視聴者として観ていて、「なんかとにかく変わったな」という印象でした。オープニングの映像からして凝っているし、ドラクエやエヴァンゲリオンの企画、藤井 風さんのサプライズ出演など、単に年末の風物詩だから観るというよりは、ちょっと次の演出が気になるな、みたいな感じで面白いと思えたというか。

福島 ありがとうございます。今回は細かいところも丁寧に作っていこうと。紅白は生放送なので、本来はそういう風に細部を作り込める瞬間があまりないんです。でも自分がやるんだったら、もう少し番組の作品性を感じられるものにしたいという思いがありました。それが“見づらさ”につながったという反省もあるんですけど。

「過去最低視聴率」への受け止め

――平均世帯視聴率が34.3%(関東地区、ビデオリサーチ調べ)で、過去最低だったと。福島さんはこの数字をどう受け止めましたか?

福島 「世帯視聴率、過去最低」って出るじゃないですか。それを見て嬉しい人はいないので、もちろん「ちょっと困ったな」とは思いましたよ。ただ視聴率って、満足度であると同時に期待値でもあって。どれくらいの人が期待して観てくれたかの数字だと思っているので、「今回の紅白は絶対観ておかなきゃいけないやつだ」と思ってもらうための世の中への投げかけ方が弱かったかな、という反省はしています。

 内容そのものには自信を持っていますし、配信サービスのNHKプラスでは、配信期間(12月31日~1月7日)中の視聴UB(ユニークブラウザ)数が紅白は約68万UBで、東京オリンピックの開会式を抜いて、サービス開始以来最多でした。世帯視聴率では測れない多様な接し方で楽しんでもらえてるのかなと、環境も少しずつ変わってはいて。

――そもそも紅白の視聴率って、具体的な数字を上層部から求められるものなんですか。

福島 いや、「世帯視聴率何%を目指してほしい」とか、そういうのはなかったですね。そういうことより「チャレンジしてほしい」という感じで。僕が担った総合演出というのは、テーマ、出場歌手や司会者、企画などの大枠を先頭に立って発案して決めていくポジションなんですが、昨年のゴールデンウィークの頃、制作統括という番組の責任者にあたる先輩から小さな会議室に呼ばれて、「大変だからこそやってほしい」と言われた記憶があります。

4時間以上にわたる紅白の全進行が書かれた台本。福島さんの台本に打たれたナンバリングは「0101」

――わりと最初から、「今年は好きなように変えていいから」という雰囲気で。

福島 そうでしたね。僕が音楽番組だけではなくて、コントとかバラエティもやっていたので「何かやってくれるだろう」という期待感はあったのかもしれません。というのも2年ぶりに有観客となった第72回の紅白歌合戦は、会場がNHKホールではなく東京国際フォーラムというちょっとトリッキーな回で、そのうえどんなテーマを掲げるべきなのか、難しい回でもありました。

 2019年までは4年にわたって「夢を歌おう」というテーマを掲げ、コロナウイルスが蔓延した前回は「今こそ歌おう みんなでエール」。じゃあ次は? という問いにどう答えるか。今回は観念的なテーマではなく、画面に具体的に反映できるようなテーマにしたいと思っていました。そのほうが視覚的に訴えられるし、チームとして目指す方向性が見えると思ったからです。