文春オンライン

“過去最低視聴率”だったNHK紅白の総合演出が語る「紅白=男女対抗から変えられたこと、変えられなかったこと」

福島明さんインタビュー #1

2022/01/31
note

「初めの一歩」になるのか「揺り戻し」が起きるのか

――年末年始に“みんなが観る番組”には独特の難しさがありそうですよね。箱根駅伝(東京箱根間往復大学駅伝競走、日本テレビ系)の視聴率も昨年よりは下がっていて。

福島 そうでしたね。実は箱根駅伝のロゴも参考にしたんですよ。箱根駅伝って、歴史を大切にしながら進化しているじゃないですか、番組の構成とかも。きっと長寿番組として同じようなジレンマを抱えているはずで、毎回観ていて勉強になります。

――今、メディア全体が曲がり角に来ていて、“変わらないといけないのに変われない”ジレンマを抱えていますよね。そんな中でなかなか変わらなさそうに見えるNHK紅白が動いた。これが「初めの一歩」になって次回の紅白でも継承されるのか、思いっきり「揺り戻し」が起こりそうなのか。そのあたりはどんな空気感ですか?

ADVERTISEMENT

福島 少なくとも、僕は後戻りできないような形を残しました。まず、このロゴを作ったらもう後戻りしにくいと思います。後に続く人には申し訳ないんですけど、きっとそのほうが、5年後10年後に「あのときに変えてよかった」と思われると信じて。

 

――「司会を紅組司会、白組司会と呼びません」と。昨年あのニュースを見たときに「お、変わるのかな」と思ったんですけど、あれももう戻せないですもんね。

福島 見える形、見えない形で、僕なりに紅白のアップデートを図ったつもりなんですけど、でもその結果、やっぱり見づらいという人もいましたし、世帯視聴率は下がっているし、そこは謙虚に受け止めて。まずは第一歩なので、「結局、男女に分かれてるじゃん」と言われたら、「すいません、1個ずつやらせてください」という言い方になっちゃうんですけどね。

紅組か白組への“投票”を残した理由

――優勝旗はやめたけど、投票はあって、紅組優勝という結果でした。

福島 正直僕らも、「紅組が勝ったとか白組が勝ったとかなしにしませんか?」という議論をずっとしていて、でも「歌合戦」というタイトルなので、今年は残そうという結論を出しました。紅白=男女で区別する時代ではもはやないですし、アーティストや出演者その人の性自認に寄り添って、できるだけ安心して紅白に参加してもらいたいと思っています。今後どういう形を目指すのかは、次回以降にまた改革の一つとしてやりましょうと。すごく中途半端なんですけど、最後に紅組か白組へ対決票を入れるという部分は残さざるを得なかったというのが本音です。

 どれだけ皆さん真剣にテレビを観てくださっているか分からないんですけど、4時間くらい観て、最後オチは知りたいと思うんです。「一応こっちが勝ったんだ」みたいなのはほしい。それがないとマルが打てないので。なんだかんだ言って大みそか、1年の最後にもやっとして終わりたくないじゃないですか(笑)。

――たしかに、「ゆく年くる年」に行けないですね。

福島 だから、それに代わるオチの付け方をみんなで発明しようということになってます。

――難しいけど、面白そうです。

福島 これを発明した人が、紅白を変えた人だと言えるよ、っていう。

後編に続く)

写真=末永裕樹/文藝春秋

その他の写真はこちらよりぜひご覧ください。

“過去最低視聴率”だったNHK紅白の総合演出が語る「紅白=男女対抗から変えられたこと、変えられなかったこと」

X(旧Twitter)をフォローして最新記事をいち早く読もう

文藝春秋をフォロー