1984年6月。アメリカで公開された1本のコメディ映画はその後も語り継がれ、ポップカルチャーとまでなった。

 コメディ映画『ゴーストバスターズ』は同年12月日本でも公開されるや大ヒット。2位の『グレムリン』に10億円近く差をつけ1985年の国内配収1位を獲得した。

 ストーリーは、大学で超常現象を研究していたピーター・ヴェンクマン(ビル・マーレ―)、レイモンド・スタンツ(ダン・エイクロイド)、イゴン・スペングラー(ハロルド・ライミス)の3人の博士が大学をクビになり、お化け退治専門の会社を起業するというもの。

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『ゴーストバスターズ』は新しかった。それまで聖水と十字架を手に悪霊と戦うのが常であったゴーストストーリーに科学(風)が登場し、退治ではなく捕獲するなどの新しい設定、そしてコメディ畑のキャストと一流のスタッフが作り上げた笑いと恐怖が一体となった作品だった。

1984年に公開され大ヒットした『ゴーストバスターズ』 ©AFLO

実家の地下室から天井まで超常現象に溢れていた…主演は“本物”の家系

『ゴーストバスターズ』製作のはじまりは、主演でもあるダン・エイクロイドが長年温めていた企画がきっかけだった。

 彼の一族は、先祖の時代から降霊術会に参加して幽霊を呼び出していたという“本物”の家系で、曾祖父は神秘主義者、父親も『A History of Ghosts(幽霊の歴史)』という本を出版していて、ダン自身も神秘主義者なのだ。家のあちこちにアメリカ心霊現象研究協会の会報が散らばっていたりと、実家の地下室から天井まで超常現象に溢れていたという。

 映画の原案では、近未来を舞台に超心理学を用いてゴースト退治を競い合うスペクタクル感あふれるファンタジーだった。だが、実現までの間にそこからどんどん二転三転していく。

 当初はダンと同じくアメリカNBCのコメディ番組「サタデー・ナイト・ライブ」のメンバーであり、『ブルース・ブラザース』の相方であったジョン・ベルーシとの共演作という構想だった。しかし、ジョン・ベルーシが薬物の過剰摂取で亡くなってしまう。

 直後にはリチャード・プライヤーを共演として『Ghost Smashers ゴーストスマッシャー』というタイトルで製作が発表されるものの、プライヤーの都合により企画そのものがキャンセルになってしまった。

 その後、ダンは映画監督のアイバン・ライトマンに原案を見せたことで事態が動き出す。ライトマンはゴーストを退治する消防士のような会社を立ち上げる話にしたら面白いのではないかと提案し、それを気にいったダンは、本作の主演のひとりハロルド・ライミスを加え、脚本の書き直しを始めることとなったのだ。