魅力的なゴーストはマシュマロマンだけではない。もう一体(?)人気のゴーストに、緑色のオニオンヘッド(後にアニメ版でスライマーと名付けられる)がいる。ゴーストバスターズの初陣で遭遇するこの大食漢のゴーストは、大食いで所かまわずぶつかって歩くダン・エイクロイドの相棒、故ジョン・ベルーシをイメージしたものだ。余談だが、ホテルのシャンデリアのまわりを飛び回る姿は実は緑色に塗ったピーナッツである。
そのほか本作のVFXは、CGが主流となった現在では信じられない人もいるかもしれないがすべてがアナログであり、登場するゴーストはすべて実物が製作され、捕獲するプロトンストリーム(陽子ビーム)の表現も手書きのアニメーションによって表現されている。
そして、本作と切っても切り離せないのが、なんと言っても、
Who you gonna call ?(誰を呼ぶ?)、「ゴーストバスターズ!」
でおなじみのレイ・パーカー・Jrの主題歌である。
劇中に登場するゴーストバスターズのテレビCMで使用するために依頼されたものの、シングル曲として発表されるや、ビルボード100の首位を3週間にわたりキープし、1984年でも代表的なヒット曲となった。
『ゴーストバスターズ』が名作たりえた2つの理由
『ゴーストバスターズ』にはそんな様々な魅力があるが、本作が名作たりえているのは作品世界のバランスである。
ひとつはコメディとホラーのバランスだ。レイモンドとウィンストンが、エクトワンの車中で聖書を引用して事の重大さをジョークなく真面目に語るシーンなど、バカバカしくもノーテンキな物語のなかに、ふと神妙な顔をのぞかせる。
これらの笑いとの緩急は、本物のオカルト研究家でありコメディアンであるダン・エイクロイドとハロルド・ライミス(2014年2月24日に死去)が作りあげた脚本に拠るところが大きい。
もうひとつが、監督のアイバン・ライトマンによるリアリティとファンタジーの絶妙なバランスだ。ゴースト退治というファンタジー色の強い物語を、ベンチャーを立ち上げた起業家の苦労話に置き換え、銀行に融資を申し込み、物件を見てまわり、テレビコマーシャルで営業活動をする共感できる物語へと昇華させた。
本作のヒットから続編やリブート作品などが作られたが、これらのバランスがここまで奇跡のようにつりあったのは『ゴーストバスターズ』ただ一作である。
『ゴーストバスターズ』の製作補であったマイケル・C・グロスは言った。
「名作とは作られるものでなく、生まれるものなんだ」と。