初期の脚本のウィンストンは、「戦略空軍の退役軍人」で「小火器と電子妨害装置のエキスパート」で「空手の黒帯」という、とんでもない優秀なキャラクターであった。しかし映画では3人の博士と違い「雇ってもらえるならなんでも信じるよ」といって憚らない彼は、ゴーストバスターズのわからないことや疑問を観客の代わりとなって聞いてくれるキャラクターとして機能し、作品のディテールに真実味をもたせてくれた。
またニューヨーク市長への説得や、レイモンドとのエクトワン車中での会話、そして「ニューヨーク万歳!」のラストカットなど、登場シーンは少ないながら映画の要所要所の“おいしい所”を持って行ってしまっていると言っても過言ではない。
一方、キャストでかわいそうなのは本作のヒール役でもある環境保護局の局長ウォルター・ペックを演じたウィリアム・アザートンだ。
彼は本作に出演以降、バーでケンカを売られ、道では子どもにバカにされ、若者たちに声を掛けられて手を振ったら「よお、タマナシ」と呼ばれるなど散々な目にあったというから、同情を禁じ得ない。
「自分たちはイカれているんじゃないか」豪華製作陣“圧巻のマシュマロマン”
また、たった1年の製作期間ながら、その製作陣も豪華だ。
VFXは、ボス・フィルム・コーポレーションが請け負った。率いるリチャード・エドランドは、『スター・ウォーズ』シリーズや『E.T.』などを手がけたジョージ・ルーカスのVFX専門会社ILM(インダストリアル・ライト&マジック)を辞めて独立したばかりだった。
彼らが手がけたシーンの中でも、とくにマシュマロマンがクライマックスにニューヨークの街中を歩く姿は圧巻である。
ただ、このふざけたデザインの「巨大マシュマロのモンスター」が飛び跳ねるように歩くシーンをテストしていたスタッフは、「自分たちはイカれているんじゃないか」と思えてきたという。
「私の映画のクライマックスがこんなクソみたいなシロモノにかかっているとは…」
また、監督のアイバン・ライトマンはこのテストシーンを見て「私の映画のクライマックスがこんなクソみたいなシロモノにかかっているとは信じられない!」と落ち込み、まあまあこれはテストだからとスタッフに慰められた。
笑いと恐怖が混然一体の『ゴーストバスターズ』の象徴ともなったこのマシュマロマンのデザインは、ダン・エイクロイドの大学からの友人であるジョン・ダヴェイキスのアイデア。送られてきた水兵帽をかぶったマシュマロマンのスケッチを見たダンは「お前は天才だ!」と叫んだという。あのゴーストバスターズのロゴも彼のアイデアである。