『ポケットモンスター』シリーズの隠れた残酷さ
つまり、もともと残酷な遊びがモチーフになっていたのである。昆虫を捕まえて戦わせるのも怪獣をカプセルに入れるのも、対象が哺乳類ではないためまだ許される。しかし、『ポケットモンスター』シリーズでは「ピカチュウ」のようなかわいいポケモンも増えていき、マスコットキャラクターのようにもなっていった。いつしかその原点はうやむやになり、ゲームやアニメでは表現されなくなる。
とはいえ、『ポケットモンスター』シリーズを楽しんでいるとその原点が頭をよぎることがある。ポケモンを捕まえるのは人間のエゴではないか? そもそも野生のポケモンと人間はどういう関係なのか? 怪獣を捕まえるのは危険すぎないか? 遊びとしてのおもしろさが先にあるため、このような理屈は置いてきぼりになっているのである。
『Pokémon LEGENDS アルセウス』では昔の時代が舞台となっており、人間とポケモンがいかに関係性を作っていったのかが描かれる。当然ながらそのころのポケモンは野生生物であり、人間に牙をむく。ゆえに『ポケットモンスター』というコンテンツにおいては「タブー」といえるその部分に触れざるを得ないのだ。
また、本作では「ポケモン世界の神話」も描いている。世界を創り出したといわれる幻のポケモン「アルセウス」に関わる物語が展開されるのだが、これも考えてみればとんでもない話である。ポケモンはいかに生まれたのか、伝説のポケモンとはなんなのか? 謎に満ちた……というより、世界の誕生という意味では現実でもかなり難解な話なわけで、挑戦的になるのは間違いない。
ポケモンの危険さ、そしてポケモン世界の誕生といったタブーに挑むのは、やはり『ポケットモンスター』シリーズの新たな可能性を開拓するためだろう。ゲームとしても「今までのRPGはあんまり……」と感じる人を取り込める可能性があり、注目作となるのも当然である。