日本将棋連盟が、2月3日、昨年の獲得賞金・対局料ベスト10を発表した。1位は渡辺明名人(37)、8194万円。今年度50勝を達成した藤井聡太竜王(19)は、6996万円で3位だった。

 なぜ、四冠の藤井竜王が1位ではなかったのか。「週刊文春」は、今年1月、その謎について報じていた。当時の記事を再公開する。(初出:週刊文春 2022年1月20日号 発売 年齢・肩書き等は公開時のまま)

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藤井竜王にひとつ足りない勲章とは…

 現在、渡辺明名人(37)に王将戦七番勝負で挑戦している藤井聡太竜王(19)。昨年11月、名人と並ぶ棋界最高峰のタイトル「竜王」を奪取し四冠。全8タイトルの半数を持つ“第一人者”となった。

「ただ、藤井竜王が名実ともにトップと見做されるには、ひとつ足りない勲章があります」

 そう指摘するのは観戦記者。それが「獲得賞金」だ。

藤井聡太

 将棋ファンの注目を集めるのが、毎年2月頃に日本将棋連盟が発表する、前年の「獲得賞金・対局料ベスト10」。2020年の1位は当時の竜王・豊島将之(31)の1億645万円。当時二冠の藤井は4554万円で4位だった。

 21年は、竜王、叡王を加えて四冠になった藤井がついにトップに座るかと思いきや、実は違うという。

「21年の1位は、棋王、王将も持つ渡辺名人になる見込み。藤井竜王は2位に留まる」(同前)

藤井の1位は来年以降に持ち越しに

 4400万円という棋界最高賞金を誇る竜王を得てもトップになれないとは、どういうことか。王座を獲得した経験のある中村太地七段(33)が語る。

「実は、タイトル賞金は就位式の日をもって振り込まれるのです。私も、見たこともないまとまった金額を通帳で確認して『おおっ』となりました(笑)」

2020年の賞金1位・豊島将之

 竜王就位式は1月24日。賞金ランキングは年末締めなので、4400万円は21年分には加算されないという落とし穴なのである。藤井の1位は来年以降に持ち越しとなる。

 とはいえ藤井が昨年、竜王戦を含めれば実質トップの“億”を稼いだのはたしかだ。タイトル戦の賞金は竜王戦以外は非公表だが、取材を元に概算したところ4つ合わせて9000万円。それ以外に優勝した朝日杯は750万円、準優勝のJT杯は150万円なので、トータル9800万円。