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 前述した通り、税務大学校のスタッフの皆さんは懸命だった。たとえば、ランドリーを使用する際は、コールセンターへ事前連絡を行った後、指定の時間にスタッフが迎えに来てくれる。誘導される形で、ランドリースペースに向かい、自身で設定などを行う。

ランドリースペース。清潔感が保たれている

 話しかけられる雰囲気だったので、「どれくらいの方が働いているのですか?」とスタッフに聞いてみた。

「どれくらいいるんだろう。ここ(税務大学校)では3棟担当していて、医療系、事務系などにわかれているので、100人以上はいると思います。僕らは、指定されたところへ行って、そこで業務を行うだけなので詳しいことはわからないんです」

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 洗剤を入れながら、「シフトみたいなものはあるんですか?」と質問する。

「はい。24時間体制なのでシフトで回しています。ランドリーが終わる頃にはシフトが変わっているので、違うスタッフが迎えに来ると思います」

 たしかに、スタッフの構成はさまざまだった。Uber Eatsを階下で受け取り、部屋まで届けてくれたのは、気の良い中年女性だった。隔離施設だからといって、変な緊張感はない。実際、ネットで調べると「隔離施設の求人」「隔離施設での運営業務全般」といった求人広告も見つかる。

食事の内容などを決めるのは誰?

 ここで一つの疑問がわく。スタッフは、指定された業務を行うだけ――であれば、その宿泊施設における全体的な指示は誰が行っているのか? 検疫所業務課へ、再度疑問を投げてみた。

「地元の方にもご説明しているのですが、24時間、厚生労働省の職員が責任者として常駐するようにしています。ただ、運営に関しては、施設の運営に協力していただける外部の企業に外注、委託しています。数多くの施設があるので、やはり公務員だけでは回らないところもありまして」

――施設の規模によって予算なども異なると思うのですが、食事などは厚生労働省の職員が決めているのか、それとも外部の企業なのか、どちらなのでしょうか?

「食事を含め外部に委託しています」

 腑に落ちた。違和感の正体が、少しわかったような気がした。外部の企業任せにしていれば“差”は生まれてしまうはずだ。私は、きちんとした予算を与えているなら内情をきちんと把握してほしいと伝えた。

税務大学校、最後の夕食

 3日目、陰性の結果を得た筆者は、無事に税務大学校を後にすることができた。退所時、我々に対して階下のスタッフが、毅然とした態度で「お疲れ様でした!」「ご苦労様でした!」と声を掛ける。そんなに見送らなくても……などと思いつつ、和光市に別れを告げた。

 だが、違和感は、まだ続いた。