「隔離ガチャ」という言葉がある。厚生労働省検疫所業務課に、「そういった言葉があることを知っていますか?」と尋ねると、次のような答えが返ってきた。

「名前は聞いたことがあります。施設によって、ランクのようなものが出てきてしまっているというのは、現状として認識しています。出来る限り、待機されている方には、同じ対応ができるようにしたいのですが」

 2月11日現在、水際対策強化に基づき、オミクロン株が支配的となっている国・地域から日本へ帰国(入国)する人に対して、宿泊施設で待機することが定められている。渡航先の国によって、3日間、6日間、10日間の隔離措置が設けられ、その後、自宅などで待機をする流れとなる。

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 宿泊施設へは、帰国後、空港での検査を経て、スタッフの指示に従う形で向かうことになるのだが、行き先は現地に到着するまでわからない。ある者はホテルやビジネスホテルへ、またある者は――。(全2回の前編/後編を読む

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「私は当たりだった」、「俺はハズレだった」……そんな感想が帰国者の間で飛び交い、「隔離ガチャ」なる言葉は、海外から戻ってくる者の間でちょっとした関心事になっている。

 滞在し隔離される宿泊施設によって、部屋のサイズや朝昼晩の食事、ないしは設備も変わってくる。到着するまで、自分がどんな施設に振り分けられるかわからない。ゆえに、「隔離ガチャ」。

 一時期、羽田空港や成田空港に到着した帰国者が、関東圏の宿泊施設に空きがないことから大阪や仙台などに遠征隔離されるケースが話題を集めた。隔離される場所や所要時間が異なるだけではなく、実は隔離先によって食事内容もバラバラだったりする。環境の差が大きいため、人によっては疲弊してしまうケースも散見しているという。

 こうした噂を耳にはしていたが、実際にどのような点がガチャ的なのかは、身をもって体験しなければわからない。渡航したのだから、隔離されるのは当然のこと。この状況下に海外へ行くこと自体がリスキーなわけで、帰国後の隔離で済むなら御の字だ。

筆者が体験した「隔離ガチャ」

 そう他人事に感じていたのだが、筆者自ら「隔離ガチャ」を体験することになるとは思いもしなかった。

 いざ体験してみた隔離措置は、たしかに“人によって当たり、ハズレが変わる”ガチャ的なシステムであり、解放後の動線にいたっては、なんともツッコミどころの多い対応であることがわかった。最前線で対応してくれるスタッフは一生懸命なのだが、構造として水漏れが生じている、そんな違和感が拭えないのだ。

 手順を追って綴っていこうと思うが、まず帰国時の状況から説明したい。