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 筆者は、プライベートではなく仕事のために渡航した。現地当局が仲介をする形で、私を含む5名で渡航し、1月下旬にドーハ経由で成田空港へと帰国。現地出国前にPCR検査を行い、陰性の結果を受けて帰着した。余談だが、海外滞在中に、自分たちの渡航先が隔離措置対応地域に組み込まれることが発表されたため、出発時点では「隔離されずに帰宅できる」という設定だった。そのため、帰国後の宿泊施設待機は想定外のスケジュールだった。

 また、渡航することに少なからず後ろめたさを感じる一方、仕事でなければ海外に行くことはできない……貴重な機会だと感じていたことも、正直に付記しておきたい。

「(隔離先は)どこになりそうですか?」と尋ねると…

 帰国すると、人間ドックのように「次はあちらへ向かってください」と誘導され、好き勝手に空港内を移動することはできなくなる。筆者の施設隔離は3日間。到着ロビーは、隔離への搭乗ゲートだと思ってほしい。

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 PCR検査のほか、入国者の健康管理を把握するアプリのインストール、書類提出に伴う各種質問対応、検査結果までの待機などなど、一連の手続きが完了するまでに約4時間。陰性という通行手形を取得するまで、相当な時間を要する。この間、自分がどこの宿泊施設に滞在するかは、まったくわからない。「どこになりそうですか?」と聞いても、「空いているところになりますのでわかりません」とはぐらかされる。

提出する書類は「誓約書」「質問票」「(渡航先の)PCR検査証明書」など

「バスが到着しました」

 午後10時すぎ。スタッフの誘導に従い、10名ほどの帰国陰性者がバスに乗り込むも、いまだ行き先は告げられない。なお、隔離のための宿泊施設だが、意外なことにググると結構な情報がヒットする。

 千葉県は、千葉県庁のホームページ内で「宿泊施設の入退室状況」を随時更新し、東横インやアパホテルといった大手ビジネスホテルもホームページ上で、一棟貸出の報告を掲載している。そのためバスの移動中、スマホのマップ機能を確認することで、なんとなく自分が滞在する施設の予測を行うことはできる。

 筆者らを乗せたバスは、京葉ジャンクションを松戸方面に向けて北上(東京方面の可能性はなくなったと解釈していいだろう)。三郷ジャンクションを西進。それを受け、皆が「さいたま市周辺のホテルか」と悟ったような顔をしていた。

 ところが――。バスは、美女木ジャンクションを北上しない。動揺した。さいたま市をスルー……このまま進むと、大泉ジャンクションからの関越道である。関東脱出の隔離? 乗客全員の顔が、心なしか紅潮している。まったく知らない帰国者と目が合い、彼もまた「どこへ」という不安が、そのまま顔に表れていた。そりゃそうだ。成田空港からジャンクションを6つも越えているのだ。しかも、バスにはトイレがない。行き先がわからないだけに、その点も不安材料だった。