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裁判長の言葉に梯被告はうつむいていき…
公判で注目されてきたのは、梯被告の成育歴だ。過去に実母から壮絶な虐待を受けてきたことや、施設での生活などが、実母の調書や梯被告の被告人質問より明らかにされた。
実母は梯被告を高校生のときに出産し、施設に預けた。梯被告が小学校に入学するタイミングで、実母とその夫は施設から被告を引き取り、一緒に暮らすことになったが、母親からバットで叩かれたり、ゴミ袋に入れられ風呂に閉じ込められる、包丁で切りつけられるなどの虐待が繰り返され、被告が小学2年生のとき、実母とその夫は保護責任者遺棄などの容疑で逮捕されることになる。
「未成年のうち大半を施設で暮らし、愛されて育つ経験ができず、また母親から壮絶な虐待を受けたことで心に深い傷を負った」(弁論より)とされる被告のパーソナリティが、事件にどう影響したか、裁判所が被告の過去をどう考慮するかも注目されていた。
「一人では食べ物も満足に食べられず、オムツも替えられぬ被害児を保護もなく8日間も置き去りにした犯行は、悪質かつ身勝手というほかない。長期間、最もそばにいて欲しかった母親に助けも求められなかった被害児の思いは言葉にしがたい」(判決言い渡し)
こう裁判長が述べたあたりから、梯被告がどんどん俯いてゆく。
「旅行の誘いに対し、子どもを預けず、子どもを連れて行かず、断りもせず、被害児はこれまでも遺棄しても生きていられたという被告人の軽心、判断の誤りによって起こされた犯行。その背景には過去に被告人自身への虐待、被告人にはどうしようもない成育的環境があり、そこで十分なケアも受けられなかったことが、今回の件に複雑に影響を与えていることは事実」