【大坂城】大坂の陣の舞台にして豊臣家滅亡の地

現在の大阪城の天守閣は昭和6年(1931)に大阪市民の寄付によって再建された。鉄筋コンクリート製で独立式層塔型5重5階。高さは54.8メートル(天守台・鯱を含む)。豊臣時代から数えて3代目となるが、その中で最長の保存期間を誇る。大阪市のシンボルであると同時に国の登録有形文化財に指定されている

 前回の連載第19回で紹介した通り、九度山を脱出した信繁は 慶長19年(1614)10月10日、大坂入城を果たした。その頃にはすでに毛利勝永、長宗我部盛親、後藤又兵衛、明石全登など、関ヶ原の戦いで徳川に苦汁を飲まされた大勢の牢人たちが続々と集結しており、最終的な数は約12万人とされている。大坂冬の陣、夏の陣で信繁はこの大坂城を拠点として徳川軍を相手に最後の戦いを繰り広げていく。

 大坂城は豊臣秀吉が天正11年(1583)から慶長4年(1599)頃にかけて4期に渡る大工事で築城した難攻不落の巨城。三方を川と海に囲まれた天然の要害で、元々織田信長の攻撃に10年も耐えた石山本願寺があった場所だ。秀吉はこの最高の立地に、四重の堀、本丸、二の丸、三の丸、西の丸、2キロメートル四方にも及ぶ巨大な惣構えなど鉄壁の防御設備を築き上げ、世の人々から「三国無双の城」と讃えられた。その広さは現在の大阪城公園の広さの約4倍。ゆえに冬の陣で豊臣方が籠城を選択したのは自然な流れだったとも言えるだろう。

 しかし冬の陣後、徳川方により外堀、内掘、惣構、三の丸、二の丸が破却され裸城に。続いて夏の陣で本丸が燃やされ、秀頼と淀、信繁の子、大助も自害した。その後、跡地に徳川秀忠によって約10年間にも及ぶ大規模な修築工事が行われた。新しく築城された大坂城は数メートルの盛り土の上に築かれ、堀も豊臣時代のものよりも深く掘られた。現在、我々が見学できる大坂城は基本的にこの時代に築かれたものであり、秀吉が築いた大坂城の遺構はすべて地下に埋没している。昭和34年(1959)と昭和59年(1984)の発掘調査で豊臣時代の大坂城の石垣が発見され、現在は一般に公開するためのプロジェクトが進められている。

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 寛文5年(1665)には落雷によって天守が焼失し、以後は天守を持たない城だったが、昭和3年(1928)に当時の大阪市長により再建が提唱され、昭和6年(1931)に260年ぶりに再建された。建物は鉄筋コンクリート製。この際の費用は全額大阪市民の寄付で賄われた。市が寄付を募ったところ申し込みが殺到したため、およそ半年で目標額の150万円(現在の600億から700億円に相当)が集まったという。大阪人はよくケチだと言われているが、出すべき時には惜しまず出すという太っ腹さ、豪気さを示すエピソードだ。平成7年(1995)から2年に渡って「平成の大改修」が行われ、国の登録有形文化財に指定された。最近は海外からの観光客が激増し、「真田丸」効果もあり、週末ともなれば天守閣行きのエレベーター前に長い行列ができるという。

大手口は大阪城の表玄関にあたり、土塁でできているため「大手口土橋」という。この大手口にある門が大手門。江戸時代、徳川秀忠によって高麗門形式で造られた門で、国の重要文化財に指定されている。大阪城に4つある出入り口の中で当時のままの状態で残っているのは大手口のみ
石垣の上には攻めてきた敵を火縄銃で狙撃するための穴が空いている
大手門を北西部から守るための重要な櫓である千貫櫓。大坂城再築初期に建てられた城内最古の建造物で国の重要文化財に指定されている。内部は鉄砲狭間や石落としなど、大坂城の正面入口を守るためのさまざまな工夫が施されている
大手門を入ったところには広い枡形がある。ここに入ってきた兵を周りの櫓から弓や鉄砲で攻撃した。石垣上の細長い長屋形式の櫓は「多聞櫓」といい、内部は150畳ほどの広さがある。現存する多聞櫓の中では最大規模
各所の石垣には、諸国の大名の家紋がそこここに見られる。探してみるのも楽しい
大坂城は慶長20年(1615)5月8日落城し、炎に包まれた。秀頼、淀殿は自害。信繁の長男・大助もともに自刃した。『駿府記』によれば数え年13歳であったという。現在の大阪城天守閣の裏手には「豊臣秀頼 淀殿ら自刃の地」の石碑が建てられている
写真左/太平洋戦争の爆撃にも耐えた天守閣 右/天守閣と六文銭をバックに記念撮影もできる
極楽橋も人気撮影スポット。橋の名称の由来は、大坂城築城前にこの地にあった石山本願寺を極楽浄土に見立てて、そこに至るための橋という意味

大阪城公園
所在地:大阪府大阪市中央区大阪城3-11
連絡先:06-6755-4146(大阪城パークセンター)
アクセス(天守閣まで):地下鉄谷町線/中央線「谷町四丁目」、谷町線「天満橋」、地下鉄中央線/長堀鶴見緑地線/JR大阪環状線「森ノ宮」、JR大阪環状線「大阪城公園」、地下鉄長堀鶴見緑地線「大阪ビジネスパーク」から徒歩約20分程度

取材協力/大阪観光ボランティアガイド協会、岩倉哲夫氏

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